自転車競技、観察の文学 藤島大氏が選ぶ一冊
ブッツァーティのジロ帯同記 ディーノ・ブッツァーティ著
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ジロとは。「イタリア半島に沿って走り抜け、さらにアルプスの峠を登り、駆け下る」伝統の過酷な自転車レースだ。1949年、高名な作家にしてジャーナリストである著者は19日間の競技を追いかける。
邦題の「帯同記」は競走そのものが主役という意味だろうか。銀輪の脇に退いて、ひたすら観察、報告であって文学でもあり、散文なのに詩のごとき作品は世に出た。
「陰険な小石」「ビリヤード台のように真っ平らな道」「やる...