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マグロの絶滅危機ランク下げ IUCN、レッドリスト更新

ナショナル ジオグラフィック

地中海、イタリア、サルデーニャ島沖。タイセイヨウクロマグロが群れをなす。乱獲から驚異的な回復を遂げた種である。(Photograph by NORBERT WU/ MINDEN PICTURES, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

国際自然保護連合(IUCN)は4日、絶滅の危機にある生物を評価する「レッドリスト」を更新、タイセイヨウクロマグロなどいくつかのマグロの危機ランクを引き下げた。

予想以上に早く回復できたのは、マグロの乱獲を止めようという過去10年の取り組みがうまくいっている証しだ。ただし、今回審議の対象になったのはマグロだけではない。研究者たちは他の多くの海洋生物がいまだ危機にあると警告している。例えば、世界のサメやエイの3分の1以上の種は、乱獲、生息地の喪失、気候変動などにより、依然として絶滅の危機に瀕している。

「良い知らせは、持続可能な漁業は可能ということです」と、米アリゾナ州立大学の海洋生物学者ベス・ポリドロ氏は語る。「私たちは、絶滅の危機に追いやるほど個体数を減らすことなく、魚を持続的に食べることができるのです」

一方で、このような状況の変化が、好きなだけ魚を取るための動機になってはならないと同氏は警告する。

「うまくいっていることは継続する必要があります」

世界中の1万6000人の専門家に支えられている組織IUCNは、それぞれの生物の状況を評価し、その危機の度合いをレッドリストにおいていくつかのカテゴリーに分類している。今回の更新では、一部の動物がより危機的な状態になったことも発表された。気候変動の影響を特に受けやすいコモドオオトカゲはその代表的な例である。

回復しつつあるマグロたち

ポリドロ氏は20年近くにわたり、IUCNで60種以上のマグロ類とカジキ類の状態を評価する専門家グループに所属している。同氏のチームは2011年に初めて包括的な調査結果を発表し、商業的に漁獲されているマグロ類の多くが絶滅の危機に瀕していることを明らかにした。

それから10年がたち、これほどまでに状況が改善されていることに同氏は驚いているという。

今回の更新で、タイセイヨウクロマグロ(Thunnus thynnus)は絶滅危惧種(endangered)から低危険種(least concern)に引き下げられた。キハダ(Thunnus albacares)とビンナガ(Thunnus alalunga)も、近危急種(near threatened)から低危険種に引き下げられた。

ミナミマグロ(Thunnus maccoyii)は、近絶滅種(critically endangered)から絶滅危惧種に引き下げられているものの、危険な状態は続いている。太平洋のクロマグロ(Thunnus orientalis)も危急種(vulnerable)から近危急種に変更されたが、これは最新の評価データが得られたためであって個体数は減ったままだとIUCNはプレスリリースで述べている。

メバチ(Thunnus obesus)とカツオ(Katsuwonus pelamis)の評価は前回と同じで、それぞれ危急種と低危険種に分類されている。

マグロというと、一般には食材としてしか認識されていないかもしれないが、実に驚異的な生き物だ。例えば、タイセイヨウクロマグロは体長2m、体重250キロ以上にまで成長し、時速60kmほどのスピードで泳ぐこともできる。

ただし、アメフト選手をも上回るそのサイズをもってしても、現代の漁法には太刀打ちできない。1970年代に入り、繁殖のために毎年メキシコ湾に集まる大型のタイセイヨウクロマグロを、延縄漁船が大量に取るようになった。同時に、北米東海岸で採食する幼魚が網漁で捕獲されるようになった。

しかし、制限された漁獲枠が正しく実行されたおかげで、個体数が回復してきたとポリドロ氏は言う。また、データが改善されたことで、より正確な評価と管理上の決定が可能になった。

ただ、いくつか注意したい点がある。マグロは世界中の広大な海に生息し、生活環(ライフサイクル)を通じてさまざまな海域を利用する。そのため、個体数管理はかなり複雑になる。

「インド洋のキハダは大きなブラックホールの中にいるようなもので、正確な状況はわかりませんが、乱獲されているようです」とポリドロ氏は言う。

同様に、タイセイヨウクロマグロのうち西大西洋の個体群は、1970年代から激減しており、まだ完全には回復していないという。

コモドオオトカゲの希望

今回の更新では、コモドオオトカゲ(Varanus komodoensis)の評価に変化があったことも大きな話題となった。しかし、こちらはマグロに比べてあまり明るい話題ではない。

コモドオオトカゲはインドネシアの小スンダ列島に生息する世界最大のトカゲだ。今後45年間に起こる海面上昇により、生息地の30%が影響を受ける可能性がある。そこで、科学者たちはコモドオオトカゲのランクを「危急種」から「絶滅危惧種」に上げた。

「気候変動と海面上昇について言えば、小さな島に住むほとんどの種が同じ問題に直面すると思います」と、インドネシアの非営利団体「コモド・サバイバル・プログラム」の生態学者、アハマド・アリフィアンディ氏は語る。同氏は今回の決定には関与していない。

危機が迫ってはいても、コモドオオトカゲは他の絶滅危惧種よりも恵まれているかもしれない。インドネシア政府は2013年から本格的なプログラムを開始し、コモドオオトカゲの保護に力を入れているとアリフィアンディ氏は言う。「今のところ、現場ではうまくいっています」

もちろん、保全活動に終わりはなく、マグロやコモドオオトカゲがさらなる危機に直面しないように警戒する必要がある。しかし、今は、動物界にとって喜ばしいニュースを祝ってもよいだろう。

文=JASON BITTEL/訳=桜木敬子 (ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2021年9月7日公開)

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