音楽家の心意気 評論家・片山杜秀
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歌舞伎役者は屋号をもつ。尾上菊五郎なら音羽屋、坂東三津五郎なら大和屋というふうに。なぜだろうか。江戸時代、武家等以外は苗字(みょうじ)を使えなかったので、一種の代用品として屋号が用いられた。よくそう言われる。
だが別の説明もある。それなりの役者でも、舞台で食べられるとは限らない。幕府が芝居を禁ずることもあれば、興行が不入りのこともある。そこで役者は身内によく副業をやらせていたという。そちらの収入...
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