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別役実の幻の第1作発見 早大演劇博物館で展示へ

喫茶店が執筆場所だった別役実さん

2020年3月に亡くなった劇作家、別役実の幻の第1戯曲がこのほど見つかり、早稲田大学演劇博物館(演博)で5月17日から展示される。早大の学生劇団「自由舞台」在籍当時に書かれた1幕の喜劇で、日本語の不条理劇を追求する劇作家の姿勢が早くも表れている。「別役実のつくりかた」と題した展示には、ほかに小学生時代の作文、中学高校時代の同人雑誌、戯曲や評論の自筆原稿などが出品される。

戯曲は存在こそ知られていたが、長く所在不明だった。長女でイラストレーターのべつやくれいさんが演博に寄贈した故人の遺品の中から見つかった。題名は「ホクロ・ソーセーヂ」といい、1960年ごろ書かれたとみられ、あまりに奇抜だったため上演されていない。自由舞台の同期生だった演出家、鈴木忠志(現在、劇団SCOT代表)が草稿に注目し、戯曲化を後押ししたとみられる。

古いアパートでソーセージをつくる夫婦のうち妻が行方知れずとなる。夫が殺し、ソーセージにしたという疑惑から住民は買わなくなる。それを迫害とみた街の人々が投石する騒ぎに。ある住民が証拠を探そうとソーセージを切り刻み、これが証拠だとホクロをかかげる。真実が不明のまま、異常な騒動がエスカレートする喜劇だ。

これまで別役実の第1戯曲は1961年の「AとBと一人の女」とされてきたが、今回発見された作はそれに先駆けるもの。劇作家は男1、女1といった名もなき小市民の不思議なかけあいを書き継ぎ、晩年に「なにがおかしいかわからないが、おかしい」という不条理喜劇に到達した。最後の作「ああ、それなのに、それなのに」に通じるナンセンス喜劇への志向が出発時からあったことがしのばれる。

別役実は1937年、旧満州(現中国東北部)の現在の長春で生まれ、引き揚げ後に各地を転々とした。外地で父を失い、母子家庭6人の長男として苦学しながら詩や絵画にいそしんだ。青春時代の魂の彷徨(ほうこう)が創作ノートや書簡類からうかがえる。展示は8月6日までの予定。幻の戯曲は図録に採録される。

(内田洋一)

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