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宝塚の遅咲き演出家、売れっ子への道 小池修一郎さん

こころの玉手箱

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こいけ・しゅういちろう 1955年東京生まれ。慶大卒。77年宝塚歌劇団演出助手、86年演出家デビュー、2006年理事、20年特別顧問。「エリザベート」ほか海外ミュージカルの潤色を得意とし、宝塚外の公演も多数。14年紫綬褒章。

手塚治虫と萩尾望都の漫画

漫画家になる、と決意したのは8歳のとき。テレビアニメ「鉄腕アトム」に夢中になっていた。お小遣いを貯(た)めては手塚治虫の原作漫画やファン向けの冊子を手に入れ、飽きずに眺めた。

絵には少し自信があった。というのも、身体が弱くて幼稚園を中退してから、包装紙の裏に絵を描いてばかりいたからだ。当時からのめり込むたちで、紙がなくなったからと家の壁にクレヨンを走らせて親から大目玉をくらったことも。図工の授業ではいつも褒められていた。

手始めに図書室から指南書を借り、実践して才能のなさを思い知った。絵や筋書きがうまいだけではダメ。描く前に、コマ割りまできっちり頭の中で組み立てなければならず、歯が立たなかった。その後も石ノ森章太郎などのSF漫画を読みあさったが、漫画家の夢はあっさり諦めた。

高校で文学、大学で映画やアングラ演劇にのめり込んだ僕が再び漫画を手に取ったのは、大学の演劇研究会で女子学生から「ポーの一族」を薦められてから。彼女のくるくるパーマのショートカットは、聞けば主人公のマネだという。

興味をそそられて読み、衝撃を受けた。大好きだったSF少年漫画の系譜は少女漫画に受け継がれ、花開いていたのだ。少年の姿のまま生き続ける吸血鬼エドガーが、社会のゆがみにクールなまなざしをむけるのだが、英国貴族の館や寄宿舎など200年の時間を行き来する。時空を超えた展開に舌を巻き、萩尾望都さんの大ファンになった。

およそ10年後、宝塚歌劇団の演出助手となった僕は、萩尾さんと運命的な出会いを果たす。東京宝塚劇場近くのホテルでお茶をしていて、たまたま隣の席になったのだ。「あの……こういうものでして」とすかさず名刺を取り出し、「いつかミュージカルにしたい」と熱弁を振るった。

「いつか」が叶(かな)ったのは4年前。それまで背の高い男役が少年を演じるのは無理がある、と封印してきたが、妖精的な魅力を放つ花組トップスターの明日海りおなら成立させられると思ったからだ。結果は大成功。萩尾さんから「30年、待った甲斐(かい)があった」と言葉を頂いた時には感激した。漫画家の道は早々に手放したが、漫画への情熱と敬愛は、還暦を過ぎて別の形で実ってくれたのである。...

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