四元康祐「詩探しの旅」孤独をのぞく目
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彼は英語を喋(しゃべ)らなかったし、僕は中国語が分からない。詩祭会場へ行くバスの車中で顔を合わせても、僕らは慎み深く笑みを交わすだけだった。
一体どこから来たのだろう?どんな詩を書くのだろう?香港の民主化運動を、彼はどんな思いで見ているのか?中国本土から来たほかの詩人たちと談笑しているのを見かけたこともあるが、大抵はひとり輪の外に佇(たたず)んでいた。
あれは、夜明け前の黒々とした大地を見つめて...
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ドイツに長く住み、世界の詩祭を巡ってきた四元康祐さんのエッセー「詩探しの旅」。詩人たちとの魅惑の出会いや詩のエッセンスをバックナンバーでお楽しみください。