杉原邦生、舞台「パンドラの鐘」演出 時代を行き来

1999年に野田秀樹が書き下ろし、野田と蜷川幸雄の2人が演出競演して話題となった作品「パンドラの鐘」を新たに演出する。「絶対に2人と比べられる。ハードルを前にすると『見てろよ』って燃えるタイプ」と笑う。
舞台は太平洋戦争前夜の長崎と古代王国、2つの時代を行き来しながら進む。原爆を想起させる「巨大な鐘」に隠された謎をめぐる物語だ。野田の戯曲は「言葉にもリズムやスピード感が書かれていて、(疾走感あふれる野田の)演出と重なり合っている。演出家としては怖い」と明かす。
蜷川版は終戦直後の長崎をイメージしてガレキを散乱させ、野田版は巨大な紙を丸めたり破ったりする抽象的な演出だった。「同じことはしたくない」と39歳の杉原は、美術や衣装に能や歌舞伎の要素を取り入れる。物語に呼応して「演出も過去と現代を行き来したら面白い」という発想だ。これまで数々の歌舞伎作品を現代的に読み替えて演出してきた経験が生きる。
オシャレもポップミュージックも大好き。今作でも新進ファッションブランドのデザイナーや、音楽ユニット「m-flo」のDJら、新鮮味のある面々を起用した。「衣装を見て『あの服、着たい』と思ってほしい。m-floの音楽なら見たいって人もいるし、逆に観劇後に『m-floアツいじゃん』と思ってくれるのもいい。演劇が演劇だけにとどまっちゃうのがすごく嫌なんです。ディズニーランドに行く、クラブで遊ぶ、と同レベルにしたいし、そのためにはかっこよくならないと。演劇を"ファッション"にしたい」。6~28日、東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで。
(佐々木宇蘭)