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玉岡かおるが新作長編 「難しい男性主人公に挑む」

「帆神」について「途中で何度も挫折しそうになった」と話す玉岡かおる

明治期から昭和初期にかけて存在した商社、鈴木商店の主人、鈴木よねを描いた「お家さん」(織田作之助賞)など、女性が主人公の小説で知られる。新作長編「帆神」(新潮社)で取り上げたのは江戸期、兵庫(現・神戸市)で回船業を営むかたわら、北前船の帆布の改良で海運を大きく変えた工楽松右衛門だ。

「男性を主人公とすることはめったにないので、どうしてもカッコ良くなりすぎる。『こんなやつ、おらんやろ』と自分でも思い、途中で何度も挫折しそうになった。書き直すうち、やっと過去を引きずりながら生きる男が生まれました」

松右衛門の故郷である兵庫・高砂には40年ほど前、結婚後に8年ほど住んだ。「神社には銅像があり、当時からその存在は知っていた。数年前に訪れる機会があり、埋もれさせておくにはもったいない人物だと改めて感じた」

一方、松右衛門を取り巻く女性たちの姿は自然に思い浮かんだ。「2人の妻は名前と出身地しか史料にない。ただ、松右衛門が新しい帆を作るなら、妻たちは機を織る仕事に関わったのでは、と想像が膨らんでいった」。他にも若いころに互いに思いを寄せあった千鳥ら、複数の女性が松右衛門の生涯に影響を及ぼす。

商人で学者の山片蟠桃は幼なじみという設定で、後年には箱館(現・函館市)のドック造営で同業の高田屋嘉兵衛と知り合う。「(嘉兵衛を主人公とする)『菜の花の沖』を再読したら、敬愛する司馬(遼太郎)先生も松右衛門を評価されていたので安心しました」と振り返る。

2022年春に上演予定の新作能の原作・台本も執筆した。60代半ばにして好奇心は全く衰えを見せない。(たまおか・かおる=作家)

(生活情報ユニット 中野稔)

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