/

雫井脩介、弁護士描く長編 「犯罪は人間の歪みを映す鏡」

作家の雫井脩介(52)が、デビュー20年の節目の作品として法廷ミステリーの長編「霧をはらう」(幻冬舎)を発表した。これまで2003年の「火の粉」で元裁判官、13年の「検察側の罪人」では検察官を主人公に描き、それぞれドラマ化、映画化されるなど話題を呼んだ。本作は弁護士を主人公にしている。「『検察側の罪人』を書いている時から、検察官とは対極の立場にある弁護士を主人公に書いてみたいと考えていた。検察官の正義と弁護士の正義は異なるのではないか。役割や立場が違えば、真実のとらえ方や真実にたどり着くためのアプローチの仕方も異なるのではないか。新作はそんな問題意識で書いた」と話す。

「霧をはらう」の舞台は小児病棟だ。入院中の4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人が死亡する。生き残った子供の母親が逮捕されたが、彼女は無実を主張する。主人公の若手弁護士は冤罪(えんざい)の証明という難しい裁判に挑み、看護師らの証言を地道に集め、検察の主張とは違う「真実」を少しずつ明らかにしていく。

家族小説や恋愛小説など、手がけるジャンルは幅広い。その中で法廷ミステリーに挑み続けるのは「法によって罪を裁く。それは法治国家では当然のことだが、人間が扱う以上、どうしてもそこに間違いが生じる。誰もが正義を信じ、真実を求めていても間違いは起きる。そこを小説に書きたくなる」からだ。

弁護士を主人公にした新作は「法によって職務が規定されているため、行動がある程度パターン化せざるを得ない裁判官や検察官に対し、弁護士は比較的そうした型から自由な立場にあると感じる。それだけに今回は主人公に据えた弁護士の人物像をまとめ上げるのに苦労した」と振り返る。

若い弁護士が真実を追い求め、看護師を訪ねるなど地道に取材を重ねる姿が印象的に描かれる。「私自身、この小説を書くために、現場の看護師や弁護士の方々から何度も話をうかがった。そうした経験が、主人公の動きにリアリティーを与える結果になったと思っている」と明かす。

「殺人犯の娘」と周囲から冷ややかな視線にさらされ、心を閉ざす容疑者家族にも光を当てている。「犯罪は関わる人間の感情の歪(ゆが)みを映す鏡だと考えてきた。そこに映し出される人間ドラマを切り取り、様々な問題を読者に考えていただく。そんな小説を書いていきたい」と力を込めた。

(渡部泰成)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン