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チャン・イーモウ監督 フィルム愛と文革の時代を撮る

中国を代表する映画監督、チャン・イーモウはもともとカメラマンとしてキャリアをスタートした。当時はフィルムで映画を撮影していた時代だ。新作「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」(5月20日公開)はそんな監督自身のフィルムへの愛情と、若き日の思い出を詰め込んだ映画だ。文化大革命のころ、綿紡績工場で働きながら「旧式の機材を使って撮影技術を独学した」という監督。「フィルムを巡るたくさんの記憶があり、いつか映画にしたかった。映画が完全にデジタル化してその思いはますます募り、幸運にも願いがかなった」という。

映画は文革まっただ中の1969年が舞台。自分の娘の姿が一瞬だけ映っているニュース映画を見るため、強制労働所から脱走した男が危険な砂漠を進み、村の映画館を目指す。お目当ての映画のフィルムは運搬途中、地面に引きずられ泥だらけに。「泥を丁寧にふき取り、ゆっくりとうちわであおぐ動作も私が当時実際に行っていたこと」と監督はいい、撮影現場で自ら俳優たちに動きを指導した。

文革を背景に描いたのは「あの時代、人々は映画を渇望していたから」だ。「暮らしが苦しくなればなるほど、人々は未来に期待や憧れ、夢を抱く。私の心の中には『芸術は困難からなる』という言葉がある。青春のこの瞬間を映画にすることで、自分の夢を完成させたかった」。映画上映を心待ちにしている人々、スクリーン幕の表と裏の両面から映画を見る観客、尊敬を集める映写技師など、映画で描かれた逸話も実際に見た光景から生まれたという。

監督は中国西北部の西安出身。文革終結後、北京電影学院に入学し、卒業後に所属した西安映画製作所で頭角を現した。今回の映画を含め、荒涼とした大地を舞台にした映画が多いのは「西北部特有の果てしなく広がる大自然の景観が好き。さらにこの景観によって過酷な暮らしの中でも生きようとする人間の意志や生命力を伝えることができるから」という。

2022年は北京冬季五輪の開・閉会式の演出でも注目を集めた。「総監督をつとめたことをとても光栄に思っている。大規模かつ生中継でパフォーマンスを演出することは、かかわる人たちも多く、映画以上の困難が伴う。監督としてのプロジェクト遂行能力を培うのに大いに役立ち、この鍛錬は私にとって非常にプラスになった」と振り返っている。

(関原のり子)

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