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芥川賞作家・李琴峰、「NFT×小説」に挑む

「彼岸花が咲く島」で2021年に芥川賞を受賞した台湾出身の李琴峰が、文芸作品におけるNFT(非代替性トークン)活用の可能性に挑んでいる。NFTはブロックチェーンの技術を用い、コピーしにくくして唯一性を担保できるもの。単行本未収録の短編小説に、限定の表紙や声優の朗読、手書き原稿といった特典を付けて13日までオークションで購入者を募る。李は「はっきり言って売れるかどうかわからないが、チャレンジだ」と語る。

デビュー5周年を記念し、自ら企画した。出品するのは2作目として発表した「流光」(初出は「群像」17年11月号)。東京・歌舞伎町のSMバーを舞台にした小説で「個人的に好きなので、今回の企画でもう一度脚光を浴びさせたい」との思いもある。日本語版に加えて中国語繁体字版・簡体字版も用意し、声優の榎本温子らの朗読など特典を付けて5種類のNFT作品にした。それぞれ価格つり上げ式、下降式というの競売方式にかけるため、合わせて10のNFT作品が存在することとなる。

つり上げ式の場合、開始価格は1イーサリアム。イーサリアムは暗号資産の1つだ。相場の変動が激しいが、5月末時点で1イーサリアムは二十数万円ほど。小説としてはかなり強気の価格設定に思える。「市場に任せるが、赤字を出すかもしれないということも想定している」(李)という。それでも挑戦するのは、小説で稼ぐ可能性を広げたいからだ。李自身、19年に会社員を辞め独立した後も「翻訳と小説執筆が半々の状態が続いた。翻訳ができなかったら続かなかった」と振り返る。

NFTはデジタルアートの分野で注目を集めている。しかしそもそも文芸は美術とは違い、大量印刷の本が不特定多数の人に所有され、読まれることを前提としている表現だ。「すべての本をNFTにすれば良いわけではないし、従来の出版形式も大事だと理解している」と李は言う。ただ「ここでしか手に入らない特典があれば、可能性はあるかもしれない」。

(西原幹喜)

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