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マレリ、6月下旬の再建計画決定めざす 赤字脱却に課題

マレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)の経営再建への歩みがようやく動きだす。31日に開いた債権者会議で取引先金融機関に対し、現在の親会社の米投資ファンド、KKRを支援企業(スポンサー)とする再建案を説明。さらに約4500億円の金融支援を求めるなど具体策も示した。6月下旬の再建計画決定を目指す。だがスポンサー候補の1社が交渉中に脱落し、新たな出資額は大幅に減る。さらに車大手による減産の影響で赤字体質から脱却できないなか、再建への道はまだ見通せない。

「KKRがスポンサーというのは気に入らないが、それ以外に手がないのが現状だ」。東京都内で開いた債権者会議の終了後、参加したマレリの取引先金融機関の関係者はこう漏らした。

マレリは3月1日に私的整理のひとつである、事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)の制度を申請。マレリが3カ月をかけ、31日に示したのは私的整理の判断にも関わったKKRが再び経営を主導するとの再建案だった。

会議は午前10時に始まり、終了時刻は午後1時を越えた。3時間超に及んだ会議で多くの時間を費やした再建案の説明では、KKRが6億5000万ドル(約830億円)の第三者割当増資を引き受ける方針を示した。さらに計1兆1千億円規模に膨らんだ債権額のカット率を約42%とし、金額にして約4500億円の債権放棄を求めることを金融機関に伝えた。

これを受け、主力行のみずほフィナンシャルグループは同日、子会社のみずほ銀行がマレリへの貸出金など3885億円について、取り立て不能または取り立て遅延の恐れが生じたと発表した。

「何とか今回の会議が無事に終わり、6月下旬に開く債権者会議で同意を得たい」(マレリ広報)。同社は会議終了後、ADRの成立に向けて一歩前進したことを強調した。3時間を超えた会議でも「(再建案が)特に否定されるようなことはなかった」とした。ただマレリの業績は長く苦境が続いている。仮に今回の再建案への合意が得られたとしても、確実に復活できるという保証はない。

KKRはもともとインド財閥で傘下に自動車部品会社を抱えるサンバルダナ・マザーソン・グループと共同でスポンサー候補に名乗りをあげていた。だが、マザーソンは条件が合わずに交渉中に撤退した。支援企業がKKRのみとなり、出資額が当初の想定から大きく減ったことも、マレリ再建には痛手となる。

マレリの2020年12月期の連結最終損益は282億円の赤字だった。21年12月期の業績は開示していないが、最終赤字からは脱却できず、4期連続での赤字が続いている。再建案が債権者の合意を得て、債権放棄や追加出資が正式に決まれば、一息つく形にはなる。とはいえ赤字体質から脱却できなければ、マレリは再び経営危機に陥りかねない。

マレリはもともと日産自動車の系列下で、旧社名のカルソニックカンセイだった17年、KKRが約5千億円で買収した。19年には欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA、現ステランティス)の自動車部品部門だった、マニエッティ・マレリを買収・統合して現在の会社名に改めた。

日産に加えて、ステランティスという強固な顧客基盤を得ることでスケールメリットによるコスト削減を狙った。だが日産の経営不振や新型コロナウイルス禍などが直撃し、売上高1兆円を超える経営規模が、逆に重荷としてのしかかった。

自動車業界では半導体不足が長期化している。さらに中国・上海市などでのロックダウン(都市封鎖)に伴う部品の調達難も加わり、車メーカーの減産は今なお続いている。

マレリの業績は主要顧客である日産の生産台数に大きく左右される。4月の同社の世界生産台数は前年同月比27%減、5月についても当初計画から減産を強いられたもようだ。取引先の減産により販売が増やせず、マレリは今期に入っても赤字体質から脱却できていない。「厳しい状況が続いている」(マレリ)という。

今回提示した再建案のなかではマレリは大規模なリストラ案も示した。国内外で3千人の従業員削減に加え、ドイツなど欧州を中心に生産拠点の閉鎖も進める方針だ。赤字体質から抜け出すためにはまずは高コスト体質からの脱却が不可欠となる。欧州での拠点閉鎖はこれまで労働組合の強い反発にあって先送りしてきた。計画する構造改革を実際に進めていけるかも再建に向けた今後の焦点となる。

現時点でマレリは「資金繰りは十分な流動性を確保しており、ADR終了までの資金のめどもついている」と話す。ただ債権者である全社の合意が必要となるADRの成立はいまだ流動的な状況だ。加えて、仮にADRが成立しても「原材料高の部品価格への転嫁が進んでいない。マレリにとって厳しい環境は変わらない」(国内証券アナリスト)。マレリの再建への道のりはまだ綱渡りの状況が続きそうだ。

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