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ソニー値上げ、オンキヨー子会社破産 半導体不足響く

日経ビジネス電子版

半導体不足がオーディオ各社の経営を試している。ソニーグループは4月1日から国内向け家電の出荷価格を引き上げる。オンキヨーホームエンターテイメントは3月28日、子会社2社の破産手続きが始まったと発表した。ここ数年、出荷の減少が続くオーディオ業界は、半導体不足下で他業種に増して競争力が問われている。

「悩んでいた方はお早めに!」

兵庫県小野市のソニーショップ、ワンズの担当者は3月25日、自社のホームページにこう書き込んだ。前日の24日、ソニーが一部製品の出荷額値上げを発表しており、駆け込み需要に期待してのことだった。都内のソニーショップではすでに15万~20万円前後のサウンドバーやスピーカーなどを中心に一部駆け込み需要が出ているもようだ。

ソニーが4月から値上げするのは、サウンドバーやホームシアターシステムなどのオーディオやカメラ、ブルーレイ・ディスクプレーヤーなど109製品。国内向け出荷価格を、3~31%値上げする。大規模な値上げは7年ぶりとなる。

オーディオを中心に「製品寿命が長いものが対象」(ソニーマーケティング)という。毎年、新製品が出るものは、その都度価格を調整できるが、数年前のモデルを継続的に販売するオーディオなどは数年前のコスト計算では割に合わない。

2013年に発売したスピーカーシステムの場合、希望小売価格ベースで26%増の33万円に価格を引き上げる。値上げ幅は7万円弱と大きい。ロングセラー商品だが、値上げを消費者がどこまで受け入れるかが試されることになる。

ソニーだけではない。家電製品の中でオーディオの値上げが顕著だ。オーディオテクニカ(東京都町田市)も4月からプロ向けのヘッドホンや、ユーチューバーなどが自宅の収録などで使うプロ向けのマイクなど12製品を3~19%値上げする。値上げするのは比較的同社の中でも主力のモデルだ。

「デノン」や「マランツ」などのブランドを持つディーアンドエムホールディングス(川崎市)も1月下旬に価格引き上げを発表。だが供給のめどが立たず、その2週間後に同じモデルの受注を止めざるを得なかった。

半導体の調達先が特定企業に集中

各社が値上げに踏み切る理由の一つが半導体不足だ。オーディオで使われる半導体は、「音作りに直結するため、比較的趣向性が高い。白物家電などで使われる汎用性の高い半導体よりも、部品の調達先が特定のメーカーに集中しやすく価格の高騰につながった」(業界関係者)。結果として、業界では多くの企業が価格を引き上げたり、供給がストップしたりしている。

物流コストの急激な上昇も影響する。1台あたり数十万円から1億円程度のオーディオを販売する高級オーディオ専門店のエス・アイ・エス(東京・文京)の営業担当者は、「海外からの配送コストが通常の2倍程度になっている」と嘆く。1台300万~500万円程度のアンプの場合、送料が通常の2倍程度の20万円程度に跳ね上がったという。

送料や資材高騰などの環境変化もあり、同店舗では1億500万円ほどで販売しようと考えていたオーディオを1500万円上乗せして販売せざるを得なくなったという。「オーディオは半年に1回程度しか価格を動かせないが、一日一日コストが上がり、半年先を見て値付けしても、その上げ幅をコストの上昇が上回ってしまう」(担当者)。さらに急激な円安の進行も重荷となり、物価高でも購入する海外の顧客に比べて日本の顧客の動きは鈍いという。

こうした状況下で苦渋の決断を下したのが、オンキヨーホームエンターテイメント(大阪府東大阪市)だ。3月28日、車載向けスピーカーなどのOEM(相手先ブランドによる生産)子会社であるオンキヨーサウンドと、国内でオーディオ販売を担うオンキヨーマーケティング2社の破産手続きが決定した。

2月8日に2社の事業活動の停止を発表しており、大阪地方裁判所に破産手続きを申し立てていた。負債はオンキヨーマーケティングが約3億2000万円、オンキヨーサウンドが約21億6000万円となり、2社合計で約24億8000万円に上る。

スマートフォンの台頭で据え置き型を中心に「オーディオ離れ」が加速したのが主要因だが、追い打ちをかけたのが半導体不足だ。「半導体の供給サイドからすれば最優先は自動車業界。そのあとにパソコン・スマホ、そして家電が続く。買い替え時期で比較的好調なテレビなどに比べ、オーディオの優先度は低かった」とオンキヨー幹部は明かす。2月上旬に破産を決断する際に、大朏宗徳会長や林亨社長ら複数の幹部は「半導体の供給が戻るまで待つのはやめよう」と覚悟を決めたという。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると2021年のオーディオ関連機器の出荷額は前年同期比で10%減の723億円と、2年連続で減少した。過去20年では5分の1の規模に縮小している。22年2月には米医療機器メーカーのマシモが、デノンやマランツのブランドを持つ米サウンド・ユナイテッドを約1260億円で買収すると発表。再編が加速しつつある。

事業環境が厳しさを増す中で、値上げに追い込まれた形のオーディオ各社。値上げが消費者に受け入れられるかどうか、商品力が試されている。

(日経ビジネス 西岡杏)

[日経ビジネス電子版 2022年3月30日の記事を再構成]

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