ブリヂストン、EVタイヤ・脱炭素に2.8兆円投資 30年まで

ブリヂストンは8月31日、電気自動車(EV)向けタイヤの強化や脱炭素化などを進めるため、2030年度までに2兆8000億円を投資すると発表した。売上高を22年度予想比で約3割増の5兆円、営業利益は8割増の8000億円へと引き上げる。21年に着手した構造改革にめどをつけ、再び成長をめざす。
石橋秀一最高経営責任者(CEO)は同日、オンライン記者会見で「タイヤはプレミアム製品に集中し、ソリューション事業の売上高を2倍に引き上げる」と語った。
軽量で走行時の抵抗が少ないEV向けタイヤなどの販売を増やす。タイヤの再利用や、データ活用事業も大幅に拡大する。過度な価格競争で利益率が低下し、リストラを迫られた過去を踏まえ、収益性を維持しながら成長を図る考えを強調した。
通常の設備更新などを除く「戦略リソース」として、30年度までに2兆8000億円を投資する。うち1兆2000億円はEVや多目的スポーツ車(SUV)向けのタイヤ増産や工場の脱炭素化にあてる。またデータ活用を含めたソリューション事業に1兆1000億円を投じる。年間投資額は24年以降に積み増し、年3300億円程度を見込む。
30年12月期に、売上高にあたる売上収益で5兆円強、減損損失などを除いた調整後営業利益は8000億円強をめざす。調整後営業利益率は15%強と最高をめざす。

収益拡大のけん引役はソリューション事業だ。タイヤの再利用や、タイヤから得るデータを使った事業などの売上高を22年度の2000億円強から、30年度は3倍以上に増やす。「23年までに成長分野を見極め、27年以降に急拡大させる」(石橋氏)考えで、ソリューション事業全体の売上高は約2兆円まで増やす。同事業が全社に占める割合は2割弱から、4割へと引き上げる考えだ。
ブリヂストンは中韓勢との競争激化などで収益が悪化。20年12月期は連結最終損益が233億円の赤字となった。
石橋氏のもとで21年から大胆なリストラを進め、23年までに19年比で世界の工場を4割減らす方針を表明。すでに50以上を閉鎖した。収益性が低く本業との関係が薄い事業は切り離し、約8000人が転籍した。石橋氏は会見で「再編はほぼ終了した。強いブリヂストンが近づきつつある」と改革の手応えを語り、攻めの姿勢に転じる考えを示した。
ただ、データビジネスなどに活路を見いだすのはライバルの仏ミシュランも同じだ。30年にタイヤの製造販売以外の新事業を売上高の2~3割にする目標を掲げ、直近では道路画像分析の米スタートアップを買収している。車両データサービスを手がける企業へのM&A(合併・買収)も重ねている。
20年の世界タイヤ市場のシェア(売上高ベース)首位はミシュランで15%、ブリヂストンは2位で13.6%だった。販売本数の過度の競争から距離を置きつつも、投資に見合う新しい収益源を育成できるかが、ブリヂストンの今後の課題となる。
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