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DXでコロナ後の社会は 世界デジタルサミット7日開幕

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、情報技術で事業モデルなどの変革を促すデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。人工知能(AI)や高速通信規格「5G」が支えるデジタル変革はコロナ収束後の社会をどう変えるのか。日本経済新聞社と総務省は6月7、8日の2日間、この分野の有力企業トップや専門家を国内外から招いて、「ポスト・ニューノーマル~レジリエントな社会を目指して」をテーマに「世界デジタルサミット2021」を開催、ネット配信する。会議に先立ち、登壇者の声を聞いた。

【関連サイト】世界デジタルサミット2021特設ページ
特設ページのURLはhttps://www.digital-summit.jp/2021/

「Beyond 5G」政府も全力 総務大臣 武田良太氏

武田良太 総務相

デジタル庁の設立などを盛り込んだデジタル改革関連法が国会で成立した。行政のデジタル化は日本だけでなく世界の流れだ。コロナ禍で日本のデジタル化の遅れが指摘されたが、誰もがその利便性を享受できるレジリエントな社会を構築する必要がある。

それには高齢者なども携帯端末を使いこなせるよう全国1800カ所以上で講習会を開き、5年間で1千万人をサポートする計画だ。また高速通信規格「5G」の全国展開に向け、財政支援措置も講じ、地域カバー率を2023年度末までに98%に引き上げたい。

日本は5Gで出遅れたが、次の規格「Beyond 5G」では世界市場で30%のシェア獲得を目指す。そのため300億円をかけ総務省所管の情報通信研究機構(NICT)に研究開発事業を立ち上げた。今後5年間で1千億円を超える国費を投じる考えだ。

分散型の社会築け NTT社長 澤田純氏

澤田純 NTT社長

コロナ禍の収束が期待されるが、しばらくはウィズコロナの時期が続くだろう。オフィスの働き方改革だけでなく工場など現場でのデジタル変革が重要だ。レジリエント(強くしなやか)な社会をつくるには、リモートワークなど分散型社会の構築が求められる。

現場の変革に必要な技術が電子空間に仮想モデルを作るデジタルツインだが、大量のデータが発生し、エネルギー消費も増えていく。そこでNTTでは光技術を情報の伝送だけでなく演算処理にも使う次世代通信インフラ「IOWN構想」を進めている。

データを光のまますべて処理できるようになれば、エネルギー効率を損なうことなく、処理速度も大幅に上げられる。分散型ネットワーク社会をつくる画期的な技術といえる。

付加価値の創出を KDDI社長 高橋誠氏

高橋誠 KDDI社長

デジタルトランスフォーメーションが叫ばれるが、重要なのは付加価値を情報技術で創出することだ。ネットワークで顧客とつながり、継続的に収益をもたらす「リカーリングモデル」の構築が求められている。

日本は技術開発ばかりに目が行きがちで「5Gの次は6Gだ」といわれるが、まずは5Gを早く全国展開し、新しいビジネスをその上に創造すべきだろう。

KDDIは5GとAR/VRの技術を使いネット上に渋谷の街を再現した「バーチャル渋谷」を開設、世界中から延べ50万人が集まった。渋谷を疑似体験し「コロナが収束したらぜひ来てほしい」という地元の要望で実現した。

好評で5月下旬には「原宿版」も開設した。今後は地方にも新たなビジネスを生み出していきたい。

平等なAI社会に ソフトバンク社長 宮川潤一氏

宮川潤一 ソフトバンク社長

デジタル変革で重要なのは人工知能(AI)の社会実装だ。我々の新社屋には1300のセンサーが埋め込まれ、飲食店の混雑率を可視化したり、エレベーターの混雑が緩和する時間を予想したりして、ビルの利用者に提供している。

そこで大切なのはいかに平等を保つかという視点だ。プライバシー保護を重視し個人を特定するのではなく、社会全体を最適に導けるような都市OS(基本ソフト)やプラットフォームづくりが重要だ。

ソフトバンクはトヨタ自動車などと「モネ・テクノロジーズ」を設立し、モビリティー事業も展開している。そこでも自動運転技術がカギを握る。移動診療車サービスなどがコロナ禍で注目されたが、本格展開には法制度などの見直しが必要だろう。

多様で感度高い組織に 富士通社長 時田隆仁氏

時田隆仁 富士通社長

コロナ禍でオンライン化やリモート化が急速に進んだ。クラウドなどデジタル技術に対する需要も高まっている。富士通も8割以上が在宅で働いており、コロナ禍が収束しても、流れは元に戻らないだろう。

そこで富士通では「レジリエンス」「リイマジン」の2つを企業メッセージに掲げた。変化に迅速に対応し、業務や組織を見直していくという意味だ。

「ワークライフシフト」という新しい働き方も提案した。テレワーク中でも仲間と協業でき、パーパスドリブン(目的志向)で働ける仕組みづくりだ。物理的・時間的な制約を取り払い、個人の能力を最大限発揮できるようにした。

ジョブ型雇用を進め、昨年度は3割が中途採用だった。役員も4人は外部から招いた。組織に多様性をもたらし変化に対する感度を高める狙いだ。職場の配置も自ら手を挙げるポスティング制度を進めている。

意識改革を促す社員との対話集会を催しているが、ネットなら国境に関係なく千人単位で集まれる。

安全で公平な街づくりを NEC社長 森田隆之氏

森田隆之 NEC社長

新型コロナウイルスの感染拡大を通じ日本はデジタル化の遅れを強く認識した。デジタル庁が9月発足するが、産業革命期のラッダイト(機械破壊)運動のように変革に反対するのではなく、デジタル化を促さないと日本に明日はない。

NECが行政システムに強いデンマークのKMDを買収したのは、安全安心で公平な街づくりが狙いだ。

欧州では様々なデータを社会に生かす「ファイウエア」という都市OS(基本ソフト)が叫ばれている。NECは開発に当初から参画し、オープンな街づくりのプラットフォームを日本に広めようとしている。

それにはデジタル時代の日本の未来像を国民全員で共有することが重要だ。デンマークは80歳以上の高齢者や視覚障害者には政府が支援するが、一般国民には自分でデジタル技術を使いこなせるよう教育や制度を施している。

「誰も取り残さない」という信頼の確立が必要だ。技術の社会実装をきちっとやり遂げ、日本のデジタル変革を後押ししたい。

クラウドなど相互接続 米エクイニクスCEO チャールズ・マイヤーズ氏

米エクイニクスCEO チャールズ・マイヤーズ氏

エクイニクスはデータセンターを世界26カ国63都市に約230カ所展開する業界最大手だ。売上高は約60億ドルだが、コロナ禍に伴うデータ需要の拡大で昨年は10%伸びた。

ニーズが高いのは金融や小売業だが、日本では製造業でのデータ需要が高い。自動車産業などはグローバルなサプライチェーンをデータ活用でよりサステナブルにしようとしている。

我々が力を注いでいるのが「ファブリック」と呼ぶ相互接続サービスだ。グーグルなどクラウド事業者にも施設を提供しており、我々を経由すれば世界中のクラウドやデータセンターとつなぐことができる。

データ分析で効率高く 米テラデータCEO スティーブ・マクミラン氏

米テラデータCEO スティーブ・マクミラン氏

パンデミックの到来でデジタルトランスフォーメーションが世界中で加速している。変化に迅速に対応し、デジタル変革を促すにはデータ分析が重要だ。

人工知能(AI)や5G、IoTなどの広がりにより膨大な情報が日々集まるが、多くのデータはサイロ状に分散しており、企業の情報責任者には情報量の爆発は大きな悩みの種だ。

テラデータはデータ管理分析のための基盤を40年以上提供してきた。顧客のサーバーだけでなく様々なクラウドに蓄積された情報も一括管理できるのが強みだ。日本でも88%の企業がデジタル変革にはデータ分析が重要だと答えている。

システム管理費を削減 米リミニストリートCEO セス・ラビン氏

リミニストリートCEO セス・ラビン氏

デジタルトランスフォーメーションが日本やアジアにも広がっている。人々の接触を減らすネット取引が増えた結果、大手の銀行や百貨店などは事業モデルの変革を迫られている。

事業変革にはデジタル技術が必要だが、企業はソフト開発に必要な人材や予算が不足している。統合基幹業務システム(ERP)を維持管理するのに人とお金がとられているからだ。

リミニストリートはERPの維持管理を専門に手がけている。ERP会社の正規料金の半額となるため、コロナ禍で引き合いが30%超伸びている。顧客はデジタル変革に必要な人材と予算を浮かせやすくなる。

最新技術活用、遅れ取り戻せ 


「核兵器よりパンデミックへの備えが重要だ」。西アフリカでエボラ熱が広がった2015年、米マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が「TED」の講演で新型コロナウイルスの登場を予測、重要なカギを握るのは「科学と技術の力だ」と説いた。
すなわち「携帯端末を使えば瞬時に情報を送れ、衛星を使えば感染者の位置を特定でき、最新の科学ならワクチンも早期に開発できる」と指摘した。ところが日本ではこのいずれの策も実現できなかった。
ファクスによる保健所の目詰まり、接触確認アプリの不具合、海外頼みのワクチン開発。レジリエントな社会づくりに向けた最新デジタル技術の活用に欠けていた。
手本となるのが韓国や台湾、シンガポールなどだ。日本でもそうした反省からデジタル化を促す法律が国会で成立した。コロナ禍を福となす大胆なデジタル変革を期待したい。
(客員編集委員 関口和一)
世界デジタルサミット2021

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デジタルサミット

日本経済新聞社は2021年6月7、8日の両日、「世界デジタルサミット2021」を開催しました。「ポスト・ニューノーマル~レジリエントな社会を目指して」をテーマに、人工知能(AI)や高速通信規格「5G」が支えるデジタル変革はコロナ収束後の社会をどう変えるのかを議論しました。


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