SKY-HI 信頼と愛ある関係、スタッフもファンも
連載 SKY-HI「Be myself, for ourselves」(29)
前々回の「SKY-HI BE:FIRSTのために次なる『旗』を立てる時期」、前回の「SKY-HI 僕らが目指すは『新しい普通』つくり出すこと」に続き、今回も『日経エンタテインメント!』2021年12月号に掲載したSKY-HIへのインタビューから掲載する。ここまではSKY-HI率いるマネジメント/レーベル「BMSG」にとっての「THE FIRST」の意味や、BMSGが目指す"新しいカルチャー"について聞いてきた。[「BE:FIRST」や「THE FIRST」についてはこちら]

ブームからムーブメント、そしてカルチャーへ。成し遂げるには、ファンの共感と理解は大きな要素になる。そのためにも、アーティストたちは「応援して良かった」という信頼を得るべきだし、供給するものが即時的なものだけであってはいけないとSKY-HIは話す。
"ザスト民"と呼ばれた「THE FIRST」のファンや、BE:FIRSTを支える「BESTY」(BE:FIRSTのファンネーム)の存在もまた、ここまでの華々しいBE:FIRSTの大躍進の一翼を担った。SNSでのファン同士の交流も盛んで、応援の仕方などもアイデアを出し合い、「彼らのためにプラスになるファンでありたい」と誠実に考える人が多いように思える。そうしたファンとの関係は、BMSGが目指す「新しいカルチャー」が遠からず誕生することを予感させる。
「僕が作ったBMSGも1周年を迎えたばかりで、その概念も1つ1つ作っている最中だし、BE:FIRSTに至ってはここからスタートするグループです。そんな僕らをたくさんの方々が応援してくれるのは、とてもありがたいことです。ただ、僕らがファンの方に楽しんでいただくことを提供する際、それが即時的であってはいけないと思っています。
例えば、『今日のJUNONの髪型がいい』『今日もSOTAのダンスが良かった』『RYUHEIの表情がすごくいい』などは、もちろん人の心を動かすものだし、そういった即時的なものの連続で喜んでいただける部分はありますが、果たしてそれが『ファンとして応援したい』につながるかというと、また別物なのかなと思っています」
「信頼」と「愛」の関係性を築き上げて広げたい
「例えば、自撮りの投稿を増やしたり、ライブでファンサービスをしてファンの方々の満足度を高めたりすることで終わらせてはいけない。僕自身はファンに喜んでもらおうと考えたことはなく、ただ、自分の思いや考えに対して真っすぐ動いていくうえで、結果としてそこにいる人に誠心誠意向き合うだけなんですけど、それだけだとどこかでズレも出ちゃう。
でも、いわゆるファンの目線で意見をくれる優秀なスタッフたちがいるんですよ。B-TownというBMSGのファンコミュニティーでも意見を聞けるし。小さい会社ですから、社長である自分と1スタッフの会話や関係性の延長線上に、会社とファンの関係も考えられるのは強みですね。意思決定に時間も掛からないし、クリエーティブに時間も掛からない……いや、掛かるけれども頑張ってなんとかという状況を続けられています。何につけても所属アーティストがたくさんの人に喜んでもらえるのは、本当にありがたいし、うれしいことですね。
彼ら(所属アーティストたち)がすべきはファンサービスをすることでも、ファンと自分のたちの間に内輪ノリを作ることでもなく、応援している人たちに『応援して良かった/間違いなかった』という信頼を勝ち得ること。『パフォーマンスをきちんとやる』という責任は重く背負っていると思います。
所属アーティストだったり、グループ内のメンバーだったり、スタッフだったりとの間に信頼と愛のある関係が築き上げ続けられれば、おのずと、その向こうにいるファンの方々とも信頼と愛のある関係を築き続けられるのではないかと思っているんです。
ラップミュージックやヒップホップがそうであったように、『遊び』はプレーヤーが作るものだけど、それを広く浸透させてカルチャーまで押し上げるのはやっぱりリスナーとかファンの存在ですよね。ファンの方の意識も、自分たちのプロジェクトやプロダクトも、ともに創造していければいいと思いますね。
まだ始まったばかりですが、それが形になったとき、(BMSGの)ファンダムの考え方や感じ方は、日本の芸能のファンダムの常識を覆せると思うし、それが『新しいカルチャー』の誕生地点になるんだろうなと思います」

【過去の記事一覧と「BE:FIRST」についてはこちら】
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2021年12月号の記事を再構成]
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