研究者の56%「研究の政治化懸念」 コロナ禍の影響調査
新型コロナウイルスの世界的な流行が科学研究のあり方に与える影響について、オランダ学術出版大手エルゼビアなどが世界の研究者約3100人に聞いたところ、63%が「研究活動一般に対する社会の注目度が高まった」と答えた。ただ、56%が「研究活動の政治化」を懸念するなど課題もある。

エルゼビアと英誌エコノミスト・グループ傘下の調査会社エコノミスト・インパクトが2022年5月から8月にかけて、世界100カ国の研究者にアンケート調査した。
新型コロナの感染拡大で、ウイルスの性質やワクチンの開発、感染予防策、感染予測などの科学的研究への関心が一気に高まった。その影響もあり、多くの研究者が研究活動への社会の関心の高まりを感じている。そのメリットとして、研究者の51%が「研究テーマに対する社会的関与・認知の向上」につながり、40%が「社会課題解消の機会」になるとみている。
逆に課題として、52%が「情報の過度な単純化」と答えたほか、「研究活動の政治化」や「社会の理解不足」をあげる研究者も過半に上った。政策担当者に対する研究の影響度を左右する要因として、49%の研究者が「個人的人脈」と答え、45%が「コミュニケーション・スキル」と回答した。
研究成果についての自身の発信能力に関して、政策担当者やジャーナリストに対しては3割近くが「大いに自信がある」と回答したが、ソーシャルメディアでの発信については18%にとどまった。オンライン上で悪意ある攻撃を経験したことがあると回答した割合は32%にのぼった。
研究者が社会との意思疎通を円滑にするために必要なこととして、54%が「コミュニケーション・スキルの訓練」、57%が「政策担当者との対話機会の拡大」をあげた。エコノミスト・インパクトは「研究活動とその成果に対する社会の信頼は世界が直面する気候変動や将来のパンデミックなど最重要課題への対応力を大きく左右する」として、研究者の役割やコミュニケーションの重要性を指摘する。

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