携帯電波オークションに楽天反対 ドコモと対応分かれる

携帯電話の電波の割り当てを価格で競い合うオークション方式導入の是非について、携帯大手4社の対応が30日出そろった。楽天モバイルは反対を表明し、携帯大手で初めて賛成を示したNTTドコモと対応が分かれた。KDDIとソフトバンクは中立な立場だ。電波割り当ての方式は各社の設備投資戦略に影響を与えるため、議論が過熱しそうだ。
総務省の有識者会議では携帯各社などのヒアリングを続け、2022年7月をめどに新たな携帯電波の割り当て方式を取りまとめるとしている。
楽天モバイルの山田善久社長は30日に開催された有識者会議で、「大きな弊害の懸念がある現段階ではオークション方式に強く反対する」と述べた。
同社は現行の比較審査方式について「公正な競争の確保や経済的価値の反映もされている」と評価した。一方でオークション方式では「資金力の大きい事業者に周波数が集中する」「小規模や後発の事業者が不利になり公正競争が後退する」などと懸念を示した。
高速通信規格「5G」の普及により携帯電波は逼迫が見込まれ、総務省は電波という資源を有効に活用する方式を探っている。携帯大手はこれまで、価格高騰につながるなどとしてオークション方式に反対してきた。

議論を動かしたのが業界最大手のドコモだ。11月16日の有識者会議で「事業者による計画の自由度が高まるオークション方式が適している」と支持を打ち出した。現行の制度では、5~7年後の基地局数やエリアの広がりなどを審査項目として比較する。モノとモノの通信が主流となる5Gでは「未知の需要に対して柔軟性が確保できなくなる可能性がある」(井伊基之社長)。
オークション方式は米国や英国など各国で採用している。価格の不当な高騰を防ぐ手段として、ドコモは獲得周波数に上限を設けるなど制度設計の工夫で対応できるとしている。
他の2社は中立だ。ソフトバンクは30日の会議で現行の比較審査方式を支持した。オークション方式についてもエリア整備や品質要件など前提条件があれば賛成するとした。KDDIは立場を明確に示さなかった。
楽天モバイル以外の携帯大手には現行の比較審査の運用に不満がある。4月に楽天に決まった電波割り当ての際は、端末の契約者情報をオンラインで書き換えられる「eSIM(イーシム)」促進が審査項目にあった。楽天が得意とするサービスなだけに「周波数の割り当てを決めるのに、特定のサービスを審査項目に加えるのは恣意的でないか」(携帯大手幹部)と不満の声が聞かれた。