今治造船、成長への航路は 「ものづくり記」まとめ読み
1970年代まで造船建造量で世界の約半分のシェアを占めた日本勢。中韓勢の台頭で今では2割にまで落ち込んでいます。三菱重工業など名門大手が造船業から手を引くなか、その大手を自陣に引き込み、業界で国内トップに上り詰めたのが今治造船です。日本の造船業に再び輝きをもたらすことができるでしょうか。
(1)今治造船「君らには無理だ」から雪辱 意地の超大型船

「君たちには無理だ」。かつて三菱重工業の幹部から投げられた、この言葉は今治造船の幹部たちの胸に長く焼き付けられています。「どうしても大型原油タンカー(VLCC)を自らの手で造りたい」という実質的な創業者で現在は社主である檜垣俊幸氏の夢がかなう日がついに訪れました。

(2)今治造船「1%の値引き」で共存 10社買収も人切りせず

今治造船は瀬戸内の造船所をこれまで10社を傘下に入れましたが、どの造船所でも従業員を削減したことはありません。檜垣幸人社長は「経営幹部も2〜3人派遣しているだけ。その会社の従業員を信じて彼らの力で復活してもらう」と話します。「共存」を是とする経営のやり方は、鉄鋼メーカーなど取引先との関係にも貫かれています。

(3)今治造船「一杯船主」と広げる商圏 貸し借りが結んだ絆

船主と共に伸びる――。今治造船で最大規模を誇る丸亀工場(香川県丸亀市)にある90メートルのクレーンには「船主」の文字が踊ります。これまで浮沈の激しい海運市況のなかを、今治造船は船主と支えあいながら大きくなりました。

(4)今治造船「デファクトを狙え」 世界初の脱炭素船に挑む

2021年9月、檜垣幸人社長は1世代ほど若いスタートアップのトップと会っていました。相手は蓄電池やそれを積んだ電気運搬船の開発を手掛けるパワーエックス(東京・港)の伊藤正裕社長です。その3カ月後に出資契約を結んだほか、エコシップの開発では大手との提携も矢継ぎ早に打ち出しています。

(5)今治造船檜垣社長「次世代船の磁場に」価格よりプレミアム

今治造船は何度もの海運不況や中韓勢の台頭のなか、2021年に業界2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)と提携するなど、世界で戦える体制づくりを築いてきました。創業家出身の檜垣幸人社長に成長の軌跡と今後の課題を聞きました。


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