JTB、福利厚生事業会社を売却 ベネ・ワンに150億円で

JTBは30日、福利厚生代行を手掛ける国内業界3位の子会社、JTBベネフィット(東京・江東)を同業大手のベネフィット・ワンに150億円で売却すると発表した。新型コロナウイルスの影響で旅行事業が低迷するなか、売却資金を構造改革などに充てる。一方、ベネ・ワンは事業取得で国内首位に浮上する見通しで、成長市場を開拓する。
福利厚生代行は、企業が従業員に提供する福利厚生を外部企業がまとめて請け負うサービスだ。ジムや飲食店、レジャーなどを従業員は優待価格で利用できる。語学やビジネスマナー講座もそろえており、健康維持から自己啓発など多様な目的で活用されている。
JTBベネは福利厚生代行の会員数ではベネ・ワン、リログループに次ぐ3位。買収は当初はベネ・ワン側から持ちかけ、2021年に入り両社で議論が本格化したとしている。

JTBはJTBベネの少数株主から株式を取得後、10月にベネ・ワンに全株式を譲渡する予定。事業譲渡後も当面はJTBベネが手掛ける福利厚生代行の「えらべる倶楽部」などのサービスは継続する。約200人の社員の雇用は維持するとしている。
JTBはコロナ禍による赤字に苦しむ。21年3月期の最終損益は過去最大の1051億円の赤字(前の期は16億円の黒字)だった。社員全体の約25%にあたる約7200人を減らしているほか、国内外の店舗の削減などリストラを急ピッチで進めている。
JTBベネの21年3月期の連結売上高は99億円で、純利益は5億円と業績は比較的堅調だ。福利厚生代行はJTBにとって、旅行プランの提供などで本業にも相乗効果がある事業だった。ただ、本業の回復が見込めないなか、収益の早期改善に向けて有力子会社を手放すことを決めた。
ベネ・ワンにとっては「官公庁に強いJTBベネフィットを買収することで顧客基盤が広がり、旅行商品の充実を図ることもできる。業界内のシェア拡大につながる」(白石徳生社長)。

国内で福利厚生代行の需要は拡大している。日本経済団体連合会の調査によると、会員企業の従業員1人1カ月当たりの福利厚生費の平均値は19年度に10万8517円と過去30年で約4割増えた。働く人が就職先を決める条件の一つに福利厚生を挙げることも多い。
JTBはJTBベネを売却する一方で、ベネ・ワンと事業提携する。データを基に社員のスキルを開発するサービスをJTBグループとして提供している。こうした法人向けサービスをベネ・ワンの顧客に提供し、旅行業に依存しない収益の成長を模索する。
- 【関連記事】ベネ・ワン、給与天引き決済サービス 電力料金など