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リスク許容する社会がイノベーション生む

奔流eビジネス(D4DR社長 藤元健太郎氏)

NIKKEI MJ

4月に道路交通法の改正案が可決され、これまで原付き扱いだった電動キックボードが新しい「特定小型原動機付き自転車」というカテゴリーに分類されることが決まった。ヘルメット着用は努力義務で、16歳以上は免許が不要になった。最高速度は車道が20キロメートル、歩道は6キロメートルとされた。

電動アシスト自転車のシェアサービスからスタートしたLuup(ループ、東京・渋谷)は2021年から電動キックボードのサービスを開始した。新事業特例制度ではヘルメット着用が任意となったことで利用が増え、現在都内では利用拠点であるポートが1200以上に広がっている。

筆者も実際に乗ってみたが、立ったまま移動できるのは快適であり、ちょっとした移動にはとても便利と感じた。東京は地下鉄が発達しているので、地下鉄の各駅から移動できるようになれば、人々の行動範囲は確実に広がるだろう。

ただ時速15キロメートルだとやはり車道はバイクや自転車にも追い抜かれるので怖く感じた。今回の改正で20キロメートルになることは朗報だ。さらに今後、歩道は歩行者と様々な電動車椅子や自動宅配ロボットなどパーソナルモビリティが共存する空間になる。そこに対して6キロメートル以下の制限をかけつつ認めたことはとても大きい。

これからの街の移動においてはこうした電動のパーソナルモビリティや様々な大きさの自動運転車が登場することが予想される。これまでの自動車やバイク、自転車などを前提にしていた法制度を変えていくことが、新しいサービスを広げるためにも重要になる。

日本の行政はどちらかというと保守的とされ、対応が遅すぎると批判されることもあった。今回の法改正はイノベーション促進に舵(かじ)を切る動きとして高く評価できる。ただ、キックボードの事故や飲酒運転といった課題も指摘される。安全対策の要請も警察から出ているようだ。

危ないから認めないのではなく、認めた上でトラブルに対してはみんなで解決していくという思想がこれからの日本のイノベーションにはとても重要だろう。

ループの岡井大輝代表は「我々はシェア自転車からスタートし、現在電動キックボードをメインにしている。しかし、それは通過点で、今後は高齢者も安心して乗れる自動運転三輪車のような電動マイクロモビリティを展開していきたい」と語る。それが日本の社会課題解決への貢献につながると考え、そのためには事業者全体と行政が共創していくことが重要とみる。

イノベーションに対して従来の既得権益者や事故に不安を感じる人達から反対の声が上がるのは必然である。しかし、これまでも社会はリスクを許容しながら進化してきた。現在のようなテクノロジーの大激動期に社会課題を解決し、活性化させるにはイノベーションを受け入れる制度設計が何よりも大事である。

今後は自動運転車やドローン、ロボットなどが街にあふれる時代を迎える。一方、地方では今日も80歳を超えた高齢者が自動車免許を手放せずに事故の恐怖を抱えたまま走っている。日々の安全と未来への挑戦の両輪を走らせていくための社会全体の合意形成も、これからますます求められることになるだろう。

[日経MJ2022年6月3日掲載]

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