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オムニチャネル時代の在庫管理 米大手スーパーの模索

CBINSIGHTS
食品スーパー世界最大手の米クローガーがスタートアップと組み、デジタル時代に対応した需要予測・在庫管理に積極投資している。実店舗とネットが融合するなど消費者の購入手段が多様化し、在庫適正化の難易度が上がっているためだ。傷みやすい生鮮品を扱う食品スーパーでは在庫管理の成否が利益に響きやすく、新時代に合わせたシステムの構築を急いでいる。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

クローガーはオムニチャネル(ネットと実店舗を統合した販売方法)の未来に備え、サプライチェーン(供給網)の最適化に多額の資金を投じている。こうした未来では、消費者は実店舗と電子商取引(EC)の両方で食料品を購入するようになり、フルフィルメント(受注・配送管理)や配達も様々な選択肢がある。

同社は食品の配達能力を強化し、競争力維持に向けて重視している生鮮食品事業のコストを削減し、品質を向上するため、特にテクノロジーに積極的に投資している。

例えば、この3年弱でラストワンマイルの自動配送を手掛ける米ニューロ(Nuro)に出資し、自動小型受注配送センター(マイクロ・フルフィルメントセンター=MFC)を築くために英ネット専業スーパーのオカド・グループ(Ocado)との戦略提携を拡大し、事業を効率化するために屋内で野菜を大量生産する「垂直農法」やレジ機能付きの「スマートカート」など様々な新しいテクノロジーを手掛ける企業と提携した。

特に力を入れているのが在庫管理だ。サプライチェーンの可視性を向上して商品の補充と計画を効率化し、ひいては品切れを減らして鮮度を確保し、食品ロスを最小限に抑える。

なぜ在庫管理が課題なのか?

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴うサプライチェーンの混乱により、小売りの在庫追跡・管理機能は大打撃を受けた。想定外の商品の遅れや不足はほぼ全ての小売りの業績を圧迫している。

傷みやすい商品が大半を占める食料品では、在庫管理は特に頭の痛い問題だ。輸送に時間がかかりすぎたり、店の陳列棚で傷んだりした食品は販売機会を失い、食品ロスを悪化させる一因になる。

ネットスーパーの急成長に伴い、食品の宅配や、商品をネットで注文して店舗で受け取る「BOPIS(ボピス)」など新たなフルフィルメントの選択肢により在庫追跡プロセスが複雑化し、在庫管理は一段と難しくなっている。管理がうまくいかなければ、スーパーは値引きや注文のキャンセルを余儀なくされ、利益が圧迫される。

そこで、クローガーなどのスーパー各社は在庫の可視性を向上し、需要予測の精度を高め、輸送距離の短縮とコスト削減に向けて最終顧客の近くでフルフィルメント(と食料の生産)を運営するために、様々なテクノロジーに多額の資金を投じている。

こうしたテックによる解決策の例には次の3つが含まれる。

・需要予測&在庫最適化

自動小型受注配送センター(自動MFC)

・店内での垂直農法

今回の記事では、クローガーがこうした解決策を手掛ける企業への投資や提携により、在庫管理の課題にどう対処しているかを取り上げる。

需要予測&在庫最適化

需要予測と在庫最適化のプラットフォームは、売り上げなどの関連データを活用して在庫計画プロセスを改善する。こうしたテックプラットフォームは品切れを減らし、在庫の流れを最適化し、利益率拡大を促し、食品ロスを最小限に抑える機会を提供する。

クローガーはモバイル端末による独自の在庫管理システムや人工知能(AI)を活用した予測、注文アプリを構築しているほか、この分野の多くの企業と連携している。

米シェルフエンジン(Shelf Engine)=関係:開発会社(ベンダー)

クローガーは需要予測と自動注文のスタートアップ、シェルフエンジンを活用している多くの食品スーパーの一つだ。シェルフエンジンは過去の販売データと高度な統計モデル、ニューラルネットワーク、機械学習を駆使し、食品スーパーの注文の精度を高める。

シェルフエンジンは主に総菜やベーカリー、農産物、肉などの生鮮食品を手掛ける。競合他社とは違い、シェルフエンジンが注文の金銭的責任を負い、業者に代金を支払い、スーパーには売れた商品の代金のみを請求する「スキャン・ベースド・トレード(SBT)」モデルを採用している。

米クリスプ(Crisp)=関係:開発会社

クリスプは食品バリューチェーンのプレーヤーをつなぎ、小売りや消費財メーカーに可視性と需要予測の精度の向上をもたらす「プログラマティック(計画)・コマース」プラットフォームを運営している。

クローガーはクリスプと統合パートナーとして連携しているほか、クリスプのデータ共有ポータルからも恩恵を受けている。

インバフレッシュ(Invafresh、カナダ)=関係:開発会社

クローガーはインバフレッシュのAI予測テクノロジーを活用している。インバフレッシュは既存企業で、最近になって生鮮食品向けに事業を転換した。同社のシステムでは「マーチャンダイジング(販売政策)」「補充」「コンプライアンス(法令順守)&サステナビリティー(持続可能性)」に及ぶ生鮮食品の需要予測プロセスを管理する。

インバフレッシュは生鮮食料品店を戦略的に重視しており、生鮮食品で差異化を目指す大手食品スーパーとの取引を優先している。

自動小型受注配送センター(自動MFC)

自動MFCは小型の配送拠点で、EC専用の物流倉庫「ダークストア」や食品スーパーの店内に設けられていることが多い。食品スーパーは自動MFCにより、ネットでの注文を速やかに出荷できる。

こうしたMFCの多くは映像解析技術(コンピュータービジョン)、ロボット、AIを活用して商品の集荷を自動化し、配送準備を整える。

クローガーはこの分野の草分けであるオカドと提携し、同社に出資もしている。ネットスーパー事業を強化するために全米各地に自動MFCを設置している。

オカド=関係:提携

クローガーは2018年にオカドとの提携を発表した後、米オハイオ州に自動MFCを設けた。これはクローガーの20カ所に上るMFC開設計画の第1弾で、各センターでは1000台以上のロボットが格子上の棚から商品を取り出し、配送のために仕分けする。

こうした配送センターに映像解析技術とネット接続を導入してコストを削減し、在庫の精度を向上することで、在庫管理を効率化できる。さらに、配送センターを最終顧客の近くに設けることで、輸送時間を短縮し、食品の鮮度を保ちやすくなる。

クローガーは上場しているオカドの株式7%近くを取得し、同社との関係を強化している。

店内での垂直農法

クローガーは店舗での垂直農法に取り組んでいる。店内で食料(特にハーブなどの傷みやすい野菜)を栽培・生産すれば、最高の鮮度を確保でき、コールドチェーン(低温輸送網)や輸送時の品質管理が不要になる。その結果、在庫をコントロールしやすくなり、在庫管理を効率化できる。

クローガーは19年、ドイツに拠点を置くインファーム(Infarm)と提携し、2店舗で垂直農法を始めた。

インファーム=関係:提携

インファームはベルリンに拠点を置く農業ネットワークで、米ワシントン州にあるクローガーの食品スーパー「QFC」2店舗にユニット式の栽培システムを設置した。

インファームのシステムは店内での農作物を栽培することで、広範囲に及ぶ輸送や低温貯蔵を不要にする。これにより、生鮮食品の在庫管理の複雑さを軽減する持続可能な解決策をもたらす。

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