/

CO2回収・再利用技術に投資資金 21年は前年比3倍に

CBINSIGHTS
二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに向け、関連技術を開発する世界のスタートアップに注目が集まっている。CO2を回収・貯留・再利用する「CCUS」テックへの投資額は2021年に11億ドル(約1200億円)と、前年比3倍に拡大する見通しだ。投資マネーが集まる背景には、各国によるCO2削減目標の引き上げと規制強化がある。多くの企業がスタートアップの先進的な技術を導入し、脱炭素にいち早く対応しようとしている。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で経済活動が停止し、2020年のCO2排出量は過去最大の減少幅を記録した。だが経済再開に伴い、(21年の)排出量は19年の水準に回復し、4億トンに達する見通しだ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

エネルギー、輸送、化学部門などの企業はCO2排出削減目標を引き上げる各国政府の新たな政策に直面している。例えば、欧州連合(EU)加盟各国は6月、30年のEUのCO2排出削減量を従来の1990年比40%減から55%減に引き上げる法律を承認した。

こうした野心的な目標を達成するため、企業やベンチャーキャピタル(VC)などの投資家はCCUS(CO2回収・利用・貯留)を手掛ける企業への出資や提携に乗り出している。今のペースが続けば、21年のCCUS企業の資金調達額は前年比3倍の11億ドルに達する見通しだ。

21年に入り、CCUSテック企業の調達額と件数が急増 (17年~21年8月18日の新株発行を伴う資金調達額と調達件数、公表ベース、100万ドル)

主な知見と見通し

CCUS部門はここ数年で急成長を遂げている。最近のCCUSテックの調達額の急増に関連する主な知見や見通しは以下の通りだ。

排出量やカーボンプライシング(炭素の価格付け)、代替エネルギーに関する政策の展開を引き続き注視したい。こうした政策により、CCUSテックを導入すれば金銭的・制度的支援を受けられる可能性があるからだ。例えば、米国の税控除「45Q」はCO2回収費用を助成する。

CO2を原料にした燃料や建設資材などの需要増加が見込まれる。米燃料開発のランザテック(LanzaTech)や米セメント製造のソリディア(Solidia)などこの分野の大手企業は自社技術を商用化して実装するため、他社との提携やさらに多額の資金調達に乗り出している。

「スコープ3」の排出基準(出張などの間接的な排出)など企業の排出量を追跡、管理、相殺するソフトウエアの改善に注目する。こうしたソフトウエアの導入が広がれば、どのツールが優れているかが明らかになる。排出量に上限を設ける新たな政策が議会で成立し、報告要件も強化されているため、優れたソフトウエアを導入している企業は他社よりも優位に立てる。

市場の推進役

CCUSテック企業はこれまで、石油・ガスなど汚染の最大の原因になっている業界から出資を受けてきた。だが、脱炭素政策の厳格化により、メーカーやテック企業など他の業界でも排出量の管理が不可欠になっている。

さらに、新型コロナの感染拡大に伴う企業活動の停止でCO2排出量は過去最大の削減幅を記録し、脱炭素に向けた抜本策の必要性が浮き彫りになった。

CCUSを主に推進するのは以下の要因だ。

世界各国の政府や規制当局によるチェックや規定が厳格化しつつある。例えば、中国政府は世界最大のCO2排出枠取引市場を開設し、国内企業に年間排出枠を与えて未使用の排出枠を販売できるようにした。米国では、CO2排出を積極的に削減していない国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素税」が議会で審議されている。

・米アマゾン・ドット・コムや英石油大手BP、仏石油大手トタルなど企業による脱炭素目標の発表がここ数年で急増し、CCUSテックへの需要や投資を促している。例えば、米マイクロソフトは30年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする「カーボン・ネガティブ」を掲げると同時に「気候イノベーション基金」を創設した。この基金はCO2排出を削減、除去する技術に10億ドルを投資する。

回収したCO2の活用、排出量の追跡・相殺ソフトウエア、クリーン製造のイノベーション(技術革新)により、企業は自社のCO2排出量をより正確に把握し、削減と再利用に向けた措置を講じやすくなる。

こうした関心の高まりは、上場企業による決算発表での発言に顕著に表れている。決算発表での発言を記録したデータベースによると、21年に入って以降、CCUS関連の専門用語への言及回数が増えている。

21年に入って以降、企業幹部のCCUSについての発言が急増 (16年~21年8月18日の決算発表でのCCUSへの言及回数)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン