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消費財各社、脱プラで代替素材スタートアップに熱視線

CBINSIGHTS
環境に配慮した製品を望む声が世界で高まっている。ドイツやフランスなどは再生プラスチックの利用を増やす「欧州プラスチック協定」に署名するなど、政府にも取り組みが広がる。消費財各社は使い捨てプラスチックを代替できる素材の技術を持ったスタートアップと組み、脱プラに注力している。CBインサイツが取り組み状況をまとめた。

持続可能性(サステナビリティー)を高める取り組みを受け、包装や容器が変わりつつある。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

電子商取引(EC)支援サービスを手掛けるカナダのショッピファイによると、企業に環境にもっと配慮した包装・容器を使ってほしいと望んでいる世界の消費者は7割以上に上る。食品世界最大手のネスレ(スイス)や米化粧品小売りのアルタ・ビューティー、米ペプシなど大手消費財メーカーや小売りはこうした消費者の声に対応しつつある。決算発表で企業幹部が持続可能な包装・容器について論じた回数は急増している。

持続可能な包装・容器への注目が高まっている 16年1~3月期から21年1~3月期の決算発表での「持続可能な」及び「包装・容器」への言及回数

こうした発言の中で、独日用品・化学大手ヘンケルや仏蒸留酒大手ペルノ・リカール、独日用品大手バイヤスドルフなどの企業は、自社の持続可能性の目標を達成するために使い捨てプラスチックの使用を減らす必要があると認めている。例えば、ヘンケルは再生プラスチックを使った包装・容器への移行を進めており、20年には自社製品の5割という基準を達成した。これは100%再生プラスチックを原料にしたボトル約4億本分に相当する。

石油化学原料で新たにつくったプラスチックを指す従来の「バージン(新品の)プラスチック」の代わりになるのは、再生プラスチック、生分解性プラスチック、紙・繊維製の包装・容器の主に3つで、いずれも包装・容器として利用が拡大している。こうした素材は使い捨て包装・容器の環境への影響を軽減する取り組みの柱となり、消費財メーカーは消費者の需要により的確に応えることができる。

主なポイント

1.プラスチック包装・容器の代替品のうち、現時点で最も利用が広がりつつあるのは再生PET「rPET(リサイクル・ポリエチレンテレフタレート)」を使った包装・容器だ。仏食品大手ダノンや英食品・日用品大手ユニリーバ、米コカ・コーラなどがこの素材を商品に採用している。新たな包装装置に投資することなく、従来のPET(プラスチックボトルの主な原料となるプラスチック)に代わることができるのが主なメリットだ。

2.食品・飲料業界などでは生分解性プラスチックや紙・繊維由来の素材の利用も増えている。こうした素材は通常、数カ月で分解される。小売りで使うために耐熱性や耐摩耗性、耐水性を高めた改良版が登場している。

3.プラスチック包装・容器の代替品の生産能力は需要を満たしていない。各社はこの供給ギャップを埋めるためにスタートアップと提携し、新たな素材や生産方法を試している。プラスチックを元の原料などの状態に分解する「解重合」などのイノベーション(技術革新)も生産能力の向上に役立つ可能性がある。

なぜ今なのか

消費財産業は消費者の持続可能性に対する姿勢の変化に対応しつつある。大半の消費者は持続可能な包装・容器の方が好ましいと考えている。米ニューヨーク大学の研究によると、持続可能性を売りにしている消費者向け商品は過去5年間の消費財の増加分の半数以上を占めている。

消費者の需要のシフトは包装・容器にも及んでいる。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)がこのほど世界の消費者を対象に実施した調査では、使い捨てプラスチックの使用量が少ない製品を買うようにしているとの回答は8割以上を占めた。

各国政府もプラスチックごみを制限しようとしており、使い捨てプラスチックの利用削減に向けた政策を相次いで実施している。例えば、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州の数カ国は25年までにバージンプラスチックの使用を20%減らす目標を定めた「欧州プラスチック協定」に署名した。

こうした様々な要因から、プラスチックごみを減らすために代替包装・容器の利用を検討する企業が増えている。

包装・容器向けの再生プラスチック

PETは包装・容器に使われる最も一般的なプラスチックの種類の一つだ。特に食品・飲料業界での利用が多い。強度に優れ、内容物の品質を守る構造になっているため、各社はPETを原料にしてボトルや容器などをつくっている。

ネスレやペプシ、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などは持続可能性の高い容器に切り替えるために、さらに多くの製品ラインで再生PETへの移行を進めている。一方、ダノンはこのほど、25年までにミネラルウオーター事業で使うプラスチックの50%を再生PETにする目標を打ち出した。

(出所:エビアン)

再生PETは既に普及への道を歩んでいる。急速に導入が進んでいる主な理由の一つは、導入の障壁が比較的低いためだ。各社は従来と同じPET処理装置を使い、再生PETを原料に用いた包装・容器を生産できる。

大手各社による需要の高まりを受け、再生PETのサプライヤーは生産を急拡大しようとしている。だが、このプロセスにはいくつかのネックや制約がある。まず、再生工場が質の高い使用済みプラスチックを十分に調達できなければ、供給にひずみが生じる可能性がある。再生PETはPETと同等のコスト競争力があるが、例えば20年に起きたようなPET不足が起きれば再生PETの方が割高になる可能性がある。

さらに、現在のPETリサイクルの大半は機械を使って行われている。新たな製品を生産するためにプラスチックを溶かすと徐々に品質が下がるため、(洗浄や粉砕などにより)物理的に再生する「メカニカルリサイクル」による再生は約10回が限度だ。

もっとも、最近のPETリサイクルの進歩により、メカニカルリサイクルの主な制約を回避できる可能性がある。例えば、解重合は使用済みPETをベースとなる化学物質に分解する「ケミカルリサイクル」の一形態だ。その後、こうしたベースとなる化学物質をPETなどのプラスチックに再生する。

フランスのカービオス(Carbios)やオランダのイオニカ・テクノロジーズ(Ioniqa Technologies)などのスタートアップは解重合の触媒となる酵素を開発し、特許を取得している。酵素による解重合の主なメリットは、リサイクル材となる使用済みプラスチックの不純物が多くても対応できる点だ。この問題はかねて従来のメカニカルリサイクルの課題となってきた。ケミカルリサイクルは従来のメカニカルリサイクルによる再生PETとは違い、プラスチックを何度でも繰り返しリサイクルでき、バージンプラスチックと同等のポリマーを生成できる。

ケミカルリサイクルの有望性は示されているが、スタートアップはこの新技術の利用を拡大しつつもリサイクル材の十分な供給を確保する難題に直面している。こうしたスタートアップは生産能力の増強に乗り出したばかりだ。カービオスは20年に同社初の実証プラントの建設に着手した。このプラントは21年半ばに稼働するとみられる。一方、イオニカは19年、オランダに同社初の工業用プラントを完成させた。既にコカ・コーラやユニリーバなどの顧客に製品を供給している。

紙・繊維由来の容器・包装

食品・飲料業界などでは紙・繊維由来の容器や包装の利用も拡大している。各社はこうした繊維を用いて丈夫な容器やカップ、包装を生産する手法の開発に取り組んでいる。

注目分野の一つは紙製ボトルだ。こうした容器の主な原料は紙や繊維だが、液体が漏れないようにするためにライナーにプラスチックを一部含んでいることが多い。それでもなお、こうしたボトルの生分解性の紙の部分はサプライチェーン(供給網)や小売りの環境に対応できる構造になっており、従来の多くの手法よりも全体としてはプラスチックの使用量を抑えられる。

繊維製ボトル(出所:エコロジック・ブランズ)

デンマークのパボコ(Paboco)、米ペーパー・ウオーター・ボトル(Paper Water Bottle)、米エコロジック・ブランズ(Ecologic Brands)などこの分野の企業はまだ初期段階のスタートアップにすぎないが、その手法は注目を集めている。例えば、コカ・コーラは現在ハンガリーで、パボコの紙製ボトルを使った製品を試験的に販売している。化粧品世界最大手の仏ロレアルは18年、エコロジックのボトルを使用した環境に優しいパーソナルケアシリーズ「シード・ファイトニュートリエンツ」を発売した。シャワーにさらされても崩れない紙製シャンプー容器などを手掛けている。

独スペクタライト(Spectalite)やフィンランドのスラパック(Sulapac)、香港のエコイノ(Ecoinno)はボトルにとどまらず、紙・繊維素材の様々な包装・容器を開発している。いずれも耐水性の問題に対処しようとしている。

(出所:フットプリント)

この分野で勢いを増しつつある企業の一つは米フットプリント(Footprint)だ。米植物肉製造のビヨンド・ミート、サラダ販売を中心とした米ファストフードチェーンのスイートグリーン、米音響機器メーカーのボーズなどが顧客に名を連ねる。フットプリントは耐熱性、耐凍性、耐油性に優れ、数日間の耐水性を持つ容器を開発している。同社は自社製品にはプラスチックと同等のコスト競争力があり、食品や電子機器などの製品の包装資材としてサプライチェーンでの損耗に耐えられるとしている。

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