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ワクチンで生理不順? 職場の働きやすさ見直す契機に

日経ビジネス電子版

新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中で、女性が生理不順を訴える例が出てきている。厚生労働省に副作用の疑いとして数十例が報告され、海外では因果関係の調査が始まる。ワクチン接種は3回目の準備が進んでいく。企業にとっては女性の働きやすさを見直す契機だ。

「ワクチンを接種した後、不正出血をした人はいませんか?」

最近、SNS(交流サイト)などで女性のこうした投稿が相次いでいる。不正出血とはホルモンの異常や様々な病気により生理以外に性器から出血することで、正しくは異常子宮出血という。生理不順などがそれに当たり、例えば平均3~7日とされる生理期間が長引いたり、いつもより腹痛などの痛みが重くなったりする。

生理は重い腹痛や腰痛、頭痛がひどくなり動けない場合もあり、生理不順になると予測ができないため業務や就職活動などに影響を及ぼす可能性もある。経済産業省によると、女性の月経に伴う体調不良による経済損失は年間6828億円に上る。

「20~30人に1人から相談」

淀川キリスト教病院(大阪市)産婦人科の柴田綾子医長も最近、婦人科の患者から「(通常数日で終わる)生理が10日も続いている」「不正出血が出た」などの相談を受けるようになった。婦人科に来院する人では「感覚値だが20~30人に1人程度相談を受ける」(柴田氏)という。

国内の副作用疑いの事例は厚労省の副反応検討部会に集約されており、報告が寄せられるようになってきた。5月ごろから徐々に事例が出ており、9月10日に開催された会合では、製造販売業者に寄せられた事例として、例えば「コミナティ筋注(ファイザー製)」の場合「性器出血(計36件)」「月経異常(計24件)」「重度月経出血(6件)」「閉経後出血(2件)」など不正出血に関わると見られる項目が報告された。

約1億1000万回の接種回数を考えれば圧倒的に少ないが、男性の報告は「前立腺炎(1件)」「前立腺腫大(1件)」などにとどまり、女性の自覚できる副作用として目立つといえる。「COVID-19ワクチンモデルナ筋注(武田薬品工業製)」でも「閉経後出血(1件)」があった。

ワクチン接種と不正出血との因果関係については明らかになっておらず、武田薬品工業や米ファイザーが提供するワクチンの添付文書には不正出血は副作用として記載されていない。

厚労省はホームページで「直接的に不正出血や月経不順を起こすことはない」と掲載している。ただ、副作用による発熱や体のだるさによるストレスが生理不順などを引き起こす可能性があるという。

ワクチンの接種が先行し、接種者が直接副作用を国に報告できる欧米では、すでに多くの不正出血の事例が報告されてきた。英国では9月中旬までに約4810万回の接種回数に対し約3万5000回(0.074%)の不正出血の報告があり、確率としては高くないものの、政府は患者の声を直接集めるオンラインのサイトなどでこうした事例を注視している。

ワクチン接種と生理不順の関係を調べるため、米国立衛生研究所(NIH)はコロナワクチンと生理関連の副作用の研究に対し、1年間に167万ドル(約2億円)支援する。このプログラムには米ボストン大学や米ジョンズ・ホプキンス大学など5大学が選ばれている。ボストン大は早ければ2022年春にも分析結果を発表する見通しだ。

女性の健康管理アプリ「ルナルナ」を提供するコンテンツ開発会社、エムティーアイが8月上旬までに10~50代の女性約2万2000万人に実施した調査で、接種を決めたときに不安だったことについて「接種後数日間の副反応が出ること」との回答が8~9割(妊娠していない人の場合)に上るなど、副作用への関心は高い。ルナルナの無料アプリのダウンロード数は1700万以上。同社は「ワクチンと生理の関係に関して調査することを検討している」という。

医薬品の副作用があることを製品の添付文書に記載するかどうかは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が判断する。添付文書は簡単に変更できるものではなく、時間がかかる可能性がある。今後3回目のワクチン接種が控える中、女性は先行する研究などを参考にワクチン接種時の過ごし方を考える必要がある。

日本で多くの企業がダイバーシティー(多様性)経営を掲げ、女性の活躍推進を目指している。健康経営というキーワードで生産性向上を探る事例も増えてきた。ただ、職場で女性特有の健康課題に対する理解がどこまで進んでいるかと言えば、心もとない。

ワクチンと生理不順との因果関係について、まだ分かっていることはない。だが、実際に不調になった場合に備えて、女性が相談できたり、柔軟な働き方を選んだりできる体制になっていることは必要だ。女性の働きやすい職場になっているかどうか、企業はこの機に見直してみてはどうだろうか。

(日経ビジネス 西岡 杏)

[日経ビジネス電子版2021年9月28日の記事を再構成]

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