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ロシア制裁が日本の中古車市場に冷水 最高値から急落

日経ビジネス電子版

ロシアによるウクライナ侵攻が、相場の上昇が続いていた日本の中古車市場に冷水を浴びせた。過去最高を記録した2月から一転、対ロシア輸出が急減した3月の平均取引価格は大きく下落した。中古車価格の下支えや引き上げに取り組んできた自動車メーカーにとっても気掛かりな事態だ。

「価格が下がる要因が見つからず、先月まではどこまで上がるのかと思っていた。ここまで激しい価格の変動は過去に経験がない」──。ある中古車ディーラーの役員は、最近の中古車市場の値動きについて驚きを隠せない。

中古車競売大手ユー・エス・エス(USS)では、2月の中古車の平均落札価格が1台当たり100万6000円と過去最高値を記録した。背景には、世界的な半導体不足によって新車の減産が長引いていることがある。

生産が需要回復に追いつかず、発注しても納期が何カ月も先となることが常態化。そうした中、あふれた需要が中古車市場を潤してきた。都内に住むある20代の女性は「欲しい車種が手に入るまでの納期が長く、中古車を選んだ」と話す。

海外向け輸出も堅調で、このまま値上がりが続くともみられていた。状況を一変させたのが、2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻だ。侵攻後の物流の混乱やロシアに対する金融制裁で代金を決済できなくなる不安などから、ロシア向け輸出に急ブレーキがかかった。

日本中古車輸出業協同組合によると、2021年のロシア向け輸出は約16万台。同国は中古車輸出の1割強を占める最大市場だった。年約670万台規模の国内中古車市場から見れば、対ロシア輸出はわずか数%。だが、現地で人気の四輪駆動車(4WD)などへの引き合いが減り、値崩れの一因となったようだ。

中古車情報のユーストカードットコム(神奈川県藤沢市)によると、業者間の国産車の平均落札価格(週次)は3月22日までに80万円を割り込み、2月のピークから約10%下がった。

自動車メーカーへの影響は

例年、買い替えのために車を売却する人が増えることから、3月は相場が下がる傾向にある。こうした季節要因にロシア向け輸出の停滞が重なり、一時的に大きな下落につながった可能性もある。

ただ、「3月下旬からオークション会場で見かける外国人ディーラーの数が大きく減ってきたと感じる」(中古車販売を手がけるグッドスピードの松井靖幸取締役管理本部長)との声もあり、影響がどこまで続くかはいまだ不透明だ。

一時的な現象にとどまらないならば、自動車メーカーにも影響を与えかねない。

業界ではここ数年、販売戦略の一環として中古車流通への関与を強める動きが広がっていた。メーカーは直営ディーラーによる中古車の買い取り強化や、「認定中古車」事業の拡大などを進めている。

中古車の値崩れを抑制できれば、今乗っている車を高いうちに売却して新車に買い替えたいと考える消費者を増やせるとの思惑がある。高い売却価格を期待できるなら、新車販売時の値引きを抑えられる効果も見込める。

かつて自社製品の値崩れに苦しんだマツダも、中古車価格の安定に力を注いできた1社だ。中古車の販売価格や下取り価格を管理するためにグループ内で情報共有の仕組みを構築。販売店では、新車の販売台数を追うための値引きを抑制する方針も徹底させている。

輸入車ブランドも同様の動きを見せる。欧州ステランティス傘下ブランドの米「Jeep(ジープ)」も、直営ディーラーの改装を機に中古車用スペースを拡大。19年から20年で中古車の取扱台数は3倍に増加し、下取り価格も大幅に上昇したという。

中古車市場で価格を維持することは、新車の売れ行きやブランドの人気にも直結する。このまま中古車の値下がりが広がるのか、あるいは再び上昇に転じるのか。先の読めない中古車相場が、新型コロナウイルス禍や半導体不足に翻弄されてきたメーカー各社にとって新たな懸念材料となっている。

(日経ビジネス 橋本真実)

[日経ビジネス電子版 2022年3月28日の記事を再構成]

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