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Amazon、スマートホームの頂点へ4つの成長戦略

CBINSIGHTS
米アマゾン・ドット・コムが家庭内の設備をデジタル化して便利にする「スマートホーム」への投資を加速している。8月にロボット掃除機「ルンバ」の米アイロボットの買収を発表したほか、家庭用フィットネス機器の企業などにも出資している。自社製品にも力を入れており、9月28日には睡眠管理端末「Halo Rise(ヘイローライズ)」を発表した。アマゾンが投資したこの分野の企業や同社製品を分析し、4つの成長戦略を浮き彫りにした。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米アマゾン・ドット・コムはスマートホームで中心的な存在になろうとしている。

同社はすでにスピーカーからテレビ、電子レンジまでありとあらゆるものに音声人工知能(AI)「アレクサ」を滑り込ませている。だが指示に応じて曲をかけたり、調理家電をインターネットに接続したりするだけにとどまるつもりはない。

例えば、家事を支援し、話し相手にもなる消費者向けロボットに進出し、最近ではロボット掃除機「ルンバ」の米アイロボットを17億ドルで買収すると発表した。これはアマゾンにとって過去4番目に大きな買収だ。

一方、ウエアラブル端末やフィットネス機器を手掛けるスタートアップにも相次いで出資し、消費者の日々の生活習慣やウエルネスでより大きな役割を担う構えを示す一方、脳をモニタリングするヘッドセットなどの新たなインターフェースを通じて住宅向けテックのアクセス向上手段を提供している。

今回はCBインサイツのデータを活用し、アマゾンと同社のベンチャーキャピタル(VC)アレクサファンドが最近、買収、出資、提携した企業からアマゾンのホームオートメーション事業での4つの重要戦略をまとめた。この4つの分野でのアマゾンとのビジネス関係に基づき、企業を分類した。

・コネクテッドプロダクト(つながる製品)

・消費者向けウエアラブル端末&フィットネス機器

・ロボットによる支援

・音声テック

コネクテッドプロダクト(つながる製品)

アマゾンは何年も前から、電子レンジから時計に至るまでアレクサを搭載したアマゾンブランドのスマート機器を展開している。アレクサ対応のスマート製品は家電などをネットでつないだ「コネクテッドホーム」を建てようとする際、顧客にアマゾンのエコシステム(生態系)にとどまるよう促す。

アマゾンはここ数年、自社ブランドの機器に加え、多くのコネクテッドプロダクトに出資している。

例えば、2021年7月には水耕園芸のスタートアップ、米ライズガーデンズ(Rise Gardens)のシリーズA(調達額900万ドル)に出資した。20年にはスマート分電盤の米スパン(Span.IO)、空気清浄テックの米モレキュル(Molekule)に資金を投じた。19年には、スマートサーモスタット(室温調整装置)を手掛けるカナダのエコビー(Ecobee、後に米バックアップ発電機メーカーのジェネラックによって買収)に4回目の投資をし、スマート水道メーターの米コンサベーション・ラボ(Conservation Labs)にも2回目の出資をした。

消費者の環境意識が高まるなか、アマゾンは顧客基盤を拡大するために住宅の省エネを支援するこうしたスタートアップに今後も出資するだろう。

消費者向けウエアラブル端末&フィットネス機器

アマゾンはヘルスケア事業の強化だけでなく、ウエアラブル端末やフィットネス機器が担う役割を通じて消費者向けウエルネス市場での地位を拡大するため、数社に出資もしている。特に身体障害者を支援する企業に注目している。

例えば、最近では視覚障害者の支援テックを開発するスマートコンタクトレンズ企業、米モジョ・ビジョン(Mojo Vision)に投資した。20年8月にはやはり視覚に特化したスタートアップ、フィンランドのPixierayにも出資している。

一方、脳とデジタル機器をつなげるブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)にも引き続き関心を示している。21年11月には脳をモニタリングするヘッドセットにより、身体を動かさずに意思疎通できる技術を開発する米コグニクション(Cognixion)に出資した。19年には同じくBCI企業の米コントロール・ラボ(CTRL-Labs)にも資金を投じた。コントロール・ラボはその直後、米メタ(旧フェイスブック)に買収された。

アマゾンは20年9月、新型コロナウイルス下での在宅フィットネスブームのさなかにスマート筋トレマシンの米トーナル(Tonal)やビデオゲームと融合したバーチャルサイクリングを手掛ける米ズイフト(Zwift)のラウンドに参加するなど、コネクテッドフィットネス機器にも投資している。

アマゾンはウエアラブル端末やフィットネス機器へのこうした投資により、様々な日々のシナリオからより多くのユーザーデータを取得できるようになるだろう。一方、自社サービスをより多くの顧客に気軽に使ってもらうため、アクセスしやすさの向上にも取り組んでいる。これは多くの家庭の日常生活の軸になるサービスを構築するために欠かせないステップだ。

ロボットによる支援

アマゾンはかねて倉庫運営用などのロボットの進化に多大な影響を及ぼしてきたが、今度は家庭用ロボットの提供に動いている。

最近ではアイロボットを17億ドルで買収した。これはアマゾンの過去4番目の規模の買収になる。アイロボットの最新のシステムは間取りを記憶し、家具や脱ぎ捨てられた靴などの障害物を回避し、AIを活用してアレクサや米アップルの音声アシスタント「シリ(Siri)」などによる「ソファの前を掃除して」といった指示に対応できる。

アマゾンは22年、別の家庭用ロボットメーカー、米ラブラドールシステムズ(Labrador Systems)に出資した。カリフォルニア州に拠点を置くラブラドールは高齢者や身体を思うように動かせない人がより長く自立して暮らせるよう支援する家庭向け自律移動ロボットを開発している。このロボットは家じゅうのモノを運んだり、調理台やテーブルからモノを取ってきたりできる。

アマゾンは消費者向けロボットをスマートホームサービスの柱と位置付けており、この分野への投資を大幅に増やすだろう。すでに話し相手になったり、家の見回りをしたりするロボット「アストロ(Astro)」を限定販売し、この分野を直接推進している。

音声テック

アマゾンはアレクサを使ってより多くの顧客に到達するため、開発者向けツールへの投資、音声コンテンツへの投資、アレクサを搭載したコネクテッド機器の機能強化という3つの明確な戦略を推進している。

同社は一時、様々な機器の規格で「スキル(実質的な音声対応アプリ)」を簡単に開発できるようにするために「アレクサスキルキット(ASK)」などの音声テック開発者向けキットに資金を投じていた。この目標はアマゾンの一部の投資にも反映されている。

アレクサファンドは21年7月、対話型AIの開発を手掛けるカナダのボイスフロー(Voiceflow)に出資した。ボイスフローはアレクサのスキル作成ツールを販売している。その数カ月前には、消費財メーカーを対象に音声ショッピングを提供する米ブルータグ(Blutag)にも出資した。

一方、アマゾンはアレクサのエコシステムを拡大するため、21年に無線通信規格標準化団体CSAの統一接続規格「マター(Matter)」に参加した。マターはコネクテッド機器の相互運用性の問題に対処しようとしている。この提携により、アレクサ搭載製品はより多くのメーカーの機器に対応できるようになった。

アマゾンは音声テックの利用を拡大するため、音声コンテンツにも投資している。20年10月にはスポーツ専用の音声SNS(交流サイト)「ロッカールーム(Locker Room)」を開発した米ベッティーラボ(Betty Labs)に出資した。ベッティーは21年3月、音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーに5000万ドルで買収された。アマゾンは19年、音声ゲームを開発する米ドライブタイム(Drivetime)のシリーズA(1100万ドル)に参加した。

独エンデル(Endel)もアマゾンから出資を受けている音声テック企業だ。エンデルのプラットフォーム「エンデル・パシフィック(Endel Pacific)」はデバイスやセンサーからの天気や位置情報、心拍数、動きなど様々なデータに基づいてユーザーの環境を分析し、一人ひとりに応じたリラックスや睡眠、集中を促す音を生成するという。このソフトはアレクサ端末で利用できる。

アレクサファンドは米センサーメーカーのベスパー・テクノロジーズ(Vesper Technologies)にも出資した。ベスパーはスマートホーム用の「常に耳を傾けている」マイクを開発している。

音声テックの範囲は拡大しつつある。このため、アマゾンのコネクテッド製品は住宅をユーザーのニーズにもっと対応できるようにするだろう。さらにブランド各社や小売りが生活の場で顧客に到達する新たなルートも提供するだろう。

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