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東電HD「小林新体制」始動 原発不稼働、脱炭素に課題

「困難なマネジメント」に挑む

 新潟県の東京電力柏崎刈羽原発(共同通信社から)

東京電力ホールディングス(HD)は29日に株主総会を開き、経済同友会の代表幹事を務めた小林喜光氏を含む取締役の選任議案を可決した。会長に就任した小林氏は収益力の低下や相次ぐ不祥事にあえぐ東電の再建に挑む。東日本大震災以降停止している原子力発電所の問題に加え、脱炭素と電力安定供給の両立など難題が待ち受ける。

「こんなに難しいマネジメントはない」。小林氏は東電会長への就任が決まった後、周囲にこう漏らした。三菱ケミカルホールディングスで経営改革を推進した実績はあるが、東電は福島第1原発の事故後に国が事実上国有化した。通常の民間企業と同じ手法で改革できるかは不透明だ。

山積する課題の一つが、原発不稼働が続くなかでの脱炭素化だ。株主総会では脱炭素関連の質問に対し、文挟誠一副社長が「二酸化炭素(CO2)の出ない電源で電化を推進する」と回答した。再生可能エネルギー関連の子会社を通じて洋上風力を開発する取り組みは、始まったばかりだ。

日本は不安定な再生エネの導入を進める一方、老朽化した火力発電所の休廃止が進み、電力需要の多い夏と冬は需給が逼迫しやすくなった。経済産業省は2022年1~2月に東電管内で電力不足に陥る見通しを示す。東電は分散する電源を統合制御する仮想発電所(VPP)の活用など、電力の安定供給への対応も必要となる。

脱炭素化と収益改善の切り札となるのが原発再稼働だ。小林新会長は4月28日の会見で原発に対し「少なくとも今あるものは使っていくのが基本的な方向だ」と発言した。ただ、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)で安全対策工事の未了やテロ対策不備が相次ぎ発覚。総会では小早川智明社長が「不適切事案を重く受け止めている」と述べた。

東電は7月にも公表する事業再建計画「第4次総合特別事業計画」で柏崎刈羽原発について21年度の稼働を断念する見通しだ。22年度以降にまず柏崎刈羽原発7号機、その後に6号機の再稼働を目指すが、実現のめどはたっていない。

16年の電力小売り全面自由化の影響で、収益低下にあえぐ電力小売部門でも不祥事が起きた。消費者庁は6月下旬、東電の小売り子会社に対し、電気・ガス販売の電話勧誘をする際に事実と異なる説明をしたのが特定商取引法違反にあたるとして、新規勧誘などの一部業務停止命令を出した。競争が激しい小売部門でも信頼回復が求められる。

東電の21年3月期の連結決算は、売上高が前の期比6%減の5兆8668億円、経常利益が28%減の1898億円だった。経常利益は14年3月期以来7期ぶりに2000億円を下回った。収益力が低下する中で、福島復興への責任を果たすのは至難の業だ。

東電は福島第1原発の事故の賠償や廃炉などの費用として約16兆円を負担する。周辺地域の除染費用などをまかなうために中長期で年4500億円の連結純利益を稼ぐ目標を掲げるが、21年3月期の純利益は1808億円にとどまる。

経産省は、小林氏を「三顧の礼」で東電会長に招いた。梶山弘志経産相は29日の会見で小林氏の就任について「福島への責任を貫徹するために、賠償・廃炉への適切な対応や企業価値の向上などに向けた抜本的な経営改革に取り組んでいただきたい」と話した。

(清水孝輔)

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