スタートアップのワールドカップ - 日本経済新聞
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スタートアップのワールドカップ

SmartTimes ネットイヤーグループ取締役チーフエヴァンジェリスト 石黒不二代氏

シリコンバレーで行われたスタートアップワールドカップの本戦に、モデレーターとして参加してきた。このピッチコンテストが他と圧倒的に異なる点は、世界中の70の国と地域の優勝者が集まって、この世界大会で争うという点だ。この規模で世界から起業家が集うコンテストは他にない。

1日目は、オーディエンスなしの世界中の予選を勝ち抜いたスタートアップのピッチ。最近はエンジェル投資家が集まるYコンビネーターでも2日間で200のピッチが行われるということだが、それと同じく、たった2分で事業とその可能性を披露し、審査員を感心させ票を取るコミュニケーション能力が問われる。もちろん、どの言語の国の優勝者であろうとも英語のプレゼンで、その後に1分の審査員とのと質疑応答が行われる。

3日目の本戦には、2000人のオーディエンスがシリコンバレーから世界中から集まった。200名以上のVCや幅広いエンジェル投資家が集まり、1日目に本線への参戦が伝えられた企業だけでなく、それに外れたスタートアップもこの懐が深い投資家に会うチャンスがある。私の知人も、日本予選で惜しくも優勝を逃したが、この本戦にオーディエンスとして参加、積極的にここに集まる投資家と話して、日本と桁外れの評価を受け大喜びであった。

世界大会というのは、普通のピッチと違う面白さがあると感じた。米国やイスラエル勢のテクノロジーや最新のビジネスモデルには目を見張るものがあった。しかし、途上国には途上国なりの市場があり、たとえ、そのビジネスモデルがありふれたものであっても、その市場のポテンシャルや地域性は評価に値する。あのウクライナからも農業ドローンで参戦があった。

どのスタートアップも「ペイン」を解決する。例えば、イスラエルのスタートアップは、内臓と同じ触感を持つ擬似内臓を開発した。外科医の執刀の練習材料だ。考えてみれば、外科医はOJTでその技術を向上させていく。ベテランの先生の執刀に参加し、それを観察し学び、少しずつ、自分の執刀の領域や経験を増やしていく。私たちは自分や家族が外科手術を受けるとき、どうか、ベテランの先生にあたりますように、と祈る。医療事故は多いそうだ。こんな簡単なペインが解決されていなかったのかと、改めて、思った。

優勝者は、カナダのパンティストッキングの会社だった。軍事用のマテリアルを使い、破れないパンティストッキングを開発したのだ。ちょっと意外に思うかも知らないが、ほぼ満場一致だと聞いた。パンティストッキングは破れるように作られているとまで言われている。破れないストッキングがあっても良いという発想がなかった。消費からエコの時代に、地球のペインをこのスタートアップが解決した。

[日経産業新聞2022年12月9日付]

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