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肝臓の「骨組み」用いる再生医療 慶大、ブタの実験成功

慶応義塾大学の八木洋専任講師や北川雄光教授らは細胞を取り除いて骨組みだけにした肝臓を活用し、肝不全を治療する動物実験に成功した。この骨組みに人間のiPS細胞から作った肝細胞を入れて移植すれば、肝硬変などを治療できる可能性があるとみている。5年後をめどに臨床試験(治験)の開始を目指す。

動物の臓器は細胞と主にコラーゲンからなる骨組み構造からできている。細胞は脂質の膜で覆われているが、骨組みは多くがたんぱく質だ。研究チームはブタの肝臓に界面活性剤を加えて細胞を洗い流す「脱細胞化」の手法を用い、骨組みだけにした。ここに別のブタの肝細胞と血管の細胞を注入して定着させ、肝臓として機能すると確かめた。

この人工肝臓をさらに別のブタに移植した。このブタは肝不全だったが、移植後1カ月でたんぱく質の合成機能や代謝機能が改善した。骨組みを活用した人工の肝臓を移植して治療効果を確認したのは世界初という。界面活性剤の濃度や、活性剤に臓器をさらす時間を調整することで、骨組みが壊れないようにした。

臓器が機能不全になり薬も効かない場合、移植手術が選択肢の一つになる。ただ国内で臓器の提供数を十分確保するのは難しい。iPS細胞から臓器を作る技術が期待されているが、大きな臓器を作り出すにはまだ技術的な課題が残る。臓器の機能を果たす体外の装置とつなぐ方法もあるが、腎臓の働きの一部を補う人工透析などに限られる。

動物からは臓器を得やすいが、人に動物の細胞を入れると免疫による拒絶反応が起こる。このため臓器を骨組みのみにし、人のiPS細胞から育てた肝細胞などを定着させて移植する方法が注目されている。骨組みのたんぱく質も動物由来だが、細胞と異なり強い免疫反応は起こらないと考えられている。

骨組みを用いる医療品として、既に人や動物の皮膚、心臓を包む膜などを用いたものが実用化されている。日本でもブタの小腸由来の人工皮膚が国の承認を受けている。ただ薄い組織や小さい臓器に限られ、肝臓のような大きな臓器では実用化していない。

今後は安全性や肝硬変などの治療効果を確かめる治験の実施を目指す。健康な人から肝臓の一部を取り出す「生体肝移植」とは異なる治療法の開発が目標だ。

人工の肝臓を治療に用いるにはロボット手術の普及も課題だ。人の手で肝臓を移植するには腹部を大きく開く手術が必要になる。ただ肝臓の機能が落ちた患者には負担が大きく、実施しにくいという。ロボット手術なら大きさ数センチメートルの人工肝臓が通れる程度に腹部を開くだけで済み、治療できる患者が増えると期待している。

(尾崎達也)

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