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遠隔医療スタートアップへの投資額、過去最高に

CBINSIGHTS
新型コロナウイルス感染症などを背景に 、米国では遠隔医療を手掛けるスタートアップへの投資額が2021年、過去最高に達した。消費者の関心の高まりや規制緩和が後押しする。不安やストレスに対処するコーチングを手掛ける米ヌーム(Noom)は21年5月に5億4千万ドル(約624億円)を調達するなど、オンラインセラピーも注目を集める。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が宣言されたのを機に、遠隔医療の利用は急増した。米疾病対策センター(CDC)によると、2020年3月最終週の米国での遠隔医療の受診者数は前年同時期に比べて154%増えた。

パンデミック突入から2年がたつ今では、遠隔医療は医療サービスの重要な一部になり、この分野のスタートアップへの投資額は過去最高に達している。

21年の遠隔医療を手掛ける企業へのエクイティ投資額は前年比57%増の180億ドル近くに達した。1回に1億ドル以上を調達する「メガラウンド」が、投資額の増加に寄与した。例えば、減量アプリを運営する米ヌームとオンライン薬局の米ロー(Ro)はそれぞれ1回のラウンドで5億ドル以上を調達した。メンタルヘルスのスタートアップ、米ライラヘルス(Lyra Health)も米コーチュー・マネジメントや米サンズ・キャピタルから2億ドルを調達した。

遠隔医療の勢いに陰りはみられない。今回の記事では、

・この投資ブームについての分析結果と予想される影響

・ブームの原動力

・最も注目を集めている分野

について取り上げる。

分析結果と予想される影響

消費者や医療提供者が一定の関心を示しているのに加え、規制の改正により利用が拡大し、公的医療保険での適用が認められるようになっているため、遠隔医療への投資はこのところ急増している。

・様々な治療段階の患者にオンラインと対面の要素をもたらすハイブリッド型の治療モデルを導入する医療提供者が増えている。例えば、米医療サービス会社アセンションとコモンスピリット・ヘルスは米コンテッサ(Contessa)と提携し、オンラインでのサポートと対面診療のリソースを組み合わせた病院レベルの在宅ケアを提供している。重症度の高い患者に在宅ケアを提供するハイブリッドケアのモデル構築に向けた医療提供者と遠隔医療会社との提携増加に注意しておきたい。

・血糖値測定器などの遠隔患者モニタリング技術は医療費の抑制と治療効果の改善に役立つため、慢性疾患のケアマネジメントで重要な役割を担うようになっている。慢性疾患の有病率は上昇しつつあり、遠隔患者モニタリングを手掛ける企業に引き続き資金が流入するだろう。

・企業は福利厚生パッケージに遠隔医療を加えつつある。特にテックに詳しい若い社員がオンライン治療を活用すると見込まれる。メンタルヘルスへの注目は高まっているが治療ニーズは満たされていないため、メンタルヘルスのオンライン診療や指導、ケアマネジメントを専門とするスタートアップが台頭するだろう。

市場の原動力

遠隔医療テクノロジーは受診を促し、コストや質を改善する可能性があるため、コロナ前から投資家の関心を集めていた。新型コロナの感染拡大を受けてこのトレンドは一段と加速した。20年の決算発表で遠隔医療に関連する用語への言及回数が急増したことがその証拠だ。

遠隔医療の利用拡大を促している要因はパンデミック以外にもある。

・規制の改正:高齢者を主な対象にした公的医療保険「メディケア」と低所得者向けの同「メディケイド」での遠隔医療に関する規制の緩和、法定の保障や払い戻しの制定など、州と国の両方のレベルでの規制改正が遠隔医療の導入を推進している。多くの州はオンライン診療と対面診療の診療報酬を恒久的に同等にしている。

・便利さと気軽さ:患者は受診に便利さと気軽さを求めており、医療提供者は人手不足に対処し、より効果的な治療を提供しようとしている。

・価値に基づく診療への移行:「価値に基づく診療」への移行はヘルスケアテックの判断に影響を及ぼし、患者体験を向上するように設計されたオンライン診療や遠隔モニタリングサービスへの投資を促している。

投資はどの分野に向かっているか

投資家の関心が最も高い分野は「オンラインセラピー、コーチング、ケアマネジメント」で、21年の遠隔医療の投資件数全体の32%を占めた。2位は「遠隔モニタリング&診断」の26%、3位は「遠隔医療のプロバイダー、プラットフォーム、マーケットプレース」の21%だった。

オンラインセラピー、コーチング、ケアマネジメント:オンラインセラピー、特にメンタルヘルスの分野のオンラインセラピーの勢いは一段と増している。例えば、減量アプリのヌームは現在、メンタルヘルスのセラピーや、不安やストレスに対処するためのコーチングを手掛けている。同社は21年5月、シリーズFラウンドで5億4000万ドルを調達した。

・遠隔モニタリング&診断:この1年の注目すべき資金調達は米ケーデンス(Cadence)と米タッソ(Tasso)のシリーズBだった。両社の調達額はそれぞれ1億ドルに達した。ケーデンスは慢性疾患向けの遠隔患者モニタリングプラットフォームを運営しており、調達資金を活用して米医療システム大手を中心にパートナーの基盤を拡大する。タッソはオンライン診療の臨床試験で使う家庭用の採血デバイスの量産体制を整える。

・遠隔医療のプロバイダー、プラットフォーム、マーケットプレース:投資家は価値に基づく医療を支える遠隔医療スタートアップに資金を注いでいる。例えば、米シティブロック・ヘルス(CityBlock Health)は21年9月のシリーズDで4億ドルを調達した。同社はメディケイドに加入している患者や、メディケイドとメディケア両方の資格を持つ患者を対象に、オンライン診療を組み込んだ定額制のケアを提供している。

市場の成熟度

遠隔医療企業への投資額はここ数年増えており、この分野は成熟し始めている。21年のシード/エンジェル段階のスタートアップへの投資件数の割合は前年に比べてやや減少したが、ミッドステージ(中期)やレイトステージ(後期)は増えた。特に、シリーズE以降の割合は2年連続で上昇した。21年10月には腰痛のオンライン治療を手掛ける米ヒンジヘルス(Hinge Health)が4億ドルを調達し、21年12月には中国の医聯(Medlinker)が5億1400万ドルを調達した。

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