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東電再建いばらの道 小林次期会長、ガバナンス改革へ

東京電力HDの会長に内定し、オンラインで記者会見する小林喜光氏(28日)

東京電力ホールディングス(HD)は28日、空席となっていた会長に三菱ケミカルHD会長の小林喜光氏が就任すると発表した。経済同友会の前代表幹事を務めた小林氏の起用でガバナンスの強化を狙う。柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)での相次ぐ不祥事などが響き、収益回復は遠のく。経営再建はいばらの道だ。

「信頼回復を主導する」

「原発の地域の皆さんの信頼を失ってしまった。安全の確保や信頼の回復の取り組みを主導するのが第1の使命だ」。小林氏は28日午後、東京都内で開いた記者会見でこう述べた。

小林氏は6月に開く予定の株主総会を経て就任する。三菱ケミカルHDでは何らかの役職には残るが、会長を退く方向だ。小林氏は東電で小早川智明社長ら執行役を指導・監督する役割を担う。2020年6月から取締役会議長を務める槍田松瑩氏は退任する。

小林氏にとって最大の課題は東電のガバナンス強化だ。東電は柏崎刈羽原発でテロ対策不備などの不祥事が頻発している。東電は柏崎刈羽原発の6号機と7号機の再稼働をめざしていたが、地元の反発は強まっており、先行きは厳しい。

東電が同日発表した21年3月期の連結決算は、純利益が前の期比3.6倍の1808億円だった。もっともこれは前の期に廃炉関連費用などで特別損失を出した反動など特殊要因が大きい。売上高は6%減の5兆8668億円、経常利益は28%減の1898億円だった。新型コロナウイルスで電力需要が縮小したほか、16年の電力小売り自由化で新電力が参入したことで競争は激しくなっている。

原発の先行きは東電の経営を大きく左右する。東電は柏崎刈羽原発の6号機と7号機が再稼働すれば一基あたり年間で1000億円程度の利益改善効果があるとみていた。だが相次ぐ不祥事で再稼働の先行きが厳しくなっている。同社は中部電力日立製作所東芝と東通原発(青森県)の共同事業化をめざす方針を掲げているが、具体的な展望を示せていない。

廃炉、処理水・・・課題が山積

小林氏には福島第1原発の廃炉に向けた対応も求められる。政府は4月中旬に福島第1原発の処理水の海洋放出を決定した。東電は環境モニタリングや風評影響への対応を着実に進める必要がある。処理水の対応でも不祥事が起きれば賠償金が膨らみかねない。

東京電力福島第1原発の敷地内に林立する、汚染水を浄化した後の処理水などを保管するタンク=共同

小林氏は処理水の対応について「政府の方針を踏まえて透明性や客観性を最大限に確保しつつ、地元のご理解をいただきながら取り組む」と話す。原子力損害賠償・廃炉等支援機構の運営委員として培った経験をどう生かせるかが問われる。

「このままでは会社が潰れる」。小林氏は07年の三菱ケミカルHDの社長就任直後に事故や不祥事が相次ぎ発生する状況に強い危機感を抱き、事業撤退と企業買収を進めた。15~19年には経済同友会の代表幹事を務めた。地球温暖化など社会問題では「今さえよければ」という危機感の欠如した状態に警鐘を鳴らし「ゆでがえるにはヘビが必要だ」と繰り返してきた。

ガバナンスが緩み、危機感が欠けた今の東電はまさに「ゆでがえる」の状態だ。国と連携を強めて福島復興への歩みを速める。安全性を最優先に原発再稼働の道筋をつける。脱炭素の実現へ技術革新を進める。小林新体制が背負う責任は重い。

小林氏「原発再稼働、安全確保が大前提」


東京電力ホールディングス(HD)の会長に内定した小林喜光氏は28日のオンラインでの記者会見で「原発再稼働は安全の確保、信頼の回復が大前提」と語った。主な一問一答は以下の通り。
――東電の会長としての最大の使命は。
「安全の確保、信頼の回復を主導するのが第1の使命だ。福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出では透明で客観的な情報公開をしっかりやる。風評被害も抑えていく。立地自治体をはじめ、ステークホルダーの意見をうかがいながら進める」
「カーボンニュートラルへの対応も大事だ。二酸化炭素(CO2)の排出量が多い電力産業が主導的にCO2を減らさないと世界がだめになる。東電は重要なパーツを担う企業だ。再生可能エネルギーや原子力をミックスしながら安定供給の責任を果たし、もうけも出しつつ、短期間に(電源構成を)転換していく」
――柏崎刈羽原発で不祥事が相次ぐなど、ガバナンスの立て直しも必要だ。
「安全とコンプライアンスの文化がないと企業は存在しないと言っていい。安全文化をつくるには数日や1年、5年ではできない。文化は簡単に変わらない。同じ会社でも工場によって文化は違う。安全は基本中の基本だという文化は東電にももちろんあると思うが、現場の感覚がどうなっているのか。今、設計や運営、建築など各部門での情報共有のあり方を総ざらいし、検証している段階だろう。きちっとチェックしたい。何か対策を打てることがあればしていきたい」
――脱炭素の潮流が大きくなる中、環境負荷が小さい原発をどう位置づけるのか。
「東電にとってみれば安全の確保、信頼の回復が大前提だ。何にもまして考えるべきことだ。原発は巨額のお金をかけて建てた。償却も進んでいる。コスト的にはまだまだ日本の産業を支えられる。安全と信頼の確保にどれだけの時間がかかるか軽々にいえないが、少なくとも今ある原発についてはやっていく(動かしていく)方向だ」
――福島復興のためにも収益力の確保が欠かせない。どう収益を底上げするのか。
「総合特別事業計画で掲げた(事故処理向けに毎年5000億円を確保し、中長期的には年4500億円の連結純利益を稼ぐ)計画は非常にチャレンジングだ。大きな目標を持って頑張っていく。状況次第で柔軟に対応しないといけないが、新しい計画が出た段階でしっかり解析したい」
「東電は福島第1原発の事故の被害者の方々に、償うために存在する。これは事実だ。だが存在するためには収益力を上げないといけない。福島復興のためにあるのが存在意義のメインであっても、日本の産業の競争力のためにも存在するんだということも考えるべきだ。複雑な問題を同時並行して解かないといけないなか、福島のために存在すると認識しつつ、前向きな社内文化もつくっていきたい」

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