プリファード、プログラミング思考型ゲーム 日米で配信
人工知能(AI)開発のプリファードネットワークス(PFN、東京・千代田)がプログラミングの要素を取り入れたゲームの開発を進めている。子供向け教材で培ったノウハウを基に、ゲーム好きな大人も楽しめるように工夫した。2023年冬に日本や米国での配信開始を目指す。ゲームを通じてプログラミングの魅力を発信する。

PFNは2月、自社で開発するコンピューターゲーム「Omega Crafter(オメガクラフター)」の動画をゲームプラットフォームで公開した。プレーヤーが主人公を操作して自由に動き回り、作物を育てたり街を作ったりしながら作中でゲーム開発を進めていく。
目を引くのが、主人公と協力して動く黄色いキャラクターの「グラミー」たちだ。グラミーはプレーヤーが指示を出すとプレーに協力してくれる。指示を出すコツとなるのがプログラミングの思考だ。
ゲームでは実際にプログラミングをする必要はなく、文章を組み合わせる形で指示を出せる。例えば、「木が倒れるまでたたく」と「続ける」という指示を組み合わせることで、グラミーが木を切り倒してくれる。
同じ順序を繰り返す、一定の条件の場合にある動作をするといった指示を的確に出せるようになると、グラミーたちを効率よく動かしてゲームを進められる。開発を担当するエンジニアの佐藤拓弥さんは「うまく組み立てると効率的に動かせることを楽しんで欲しい」と話す。
こうした工夫には子ども向けプログラミング教材の知見が生かされている。PFNは20年に子ども向けのプログラミング事業に参入した。同年8月から首都圏の学習塾やオンラインで自社開発の教材「Playgram(プレイグラム)」の提供を始めた。現在は学習塾のやる気スイッチグループ(東京・中央)と立ち上げた共同出資会社を通じ、全国700以上の教室で教材が利用されている。

PFNではプレイグラムを開発、提供してきた経験から子どもたちがつまずきやすいポイントを分析した。「右に3歩」といった細かな指示ではなく、人間に伝えるときのような自然な言葉でグラミーを動かせるようにして、プログラミングになじみのない人も遊びやすくした。
オメガクラフターの開発は3人で始め、現在は4人で進めている。少人数での開発ながら、木や地形といった風景を自動で配置できる仕組みを活用。プレーするごとにボスや宝箱の配置なども変わり、何度も楽しめるようにした。
PFNはオメガクラフターを「ゲームを楽しみながらプログラミングの考え方や知識が学べるエンターテインメント」と位置づける。学習のためのツールではなくプレーヤーが純粋に楽しめるゲームを作り、「事業として採算をとれるようにしたい」(佐藤さん)
PFNは22年10月、AIの一種である深層学習の技術を使いキャラクターを進化させて楽しむスマホアプリ「MEMES(ミームズ)」の配信も始めた。IT(情報技術)の技術力を産業向けだけでなく教育やゲームの分野でも発揮し、事業拡大を目指す。
(山田彩未)
