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試練続く小売企業、今検討すべき5つの技術戦略

CBINSIGHTS
人手不足に物価上昇、新型コロナウイルス禍に伴う消費行動の変化と、小売り・消費財企業を取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。それを乗り越えるにはデジタル技術の活用が欠かせないが、具体的にどうすればよいか、見極めは難しい。人工知能(AI)を使った電子商取引(EC)の収益強化策など、小売り・消費財企業が今年検討すべき課題とその技術的な解決策を5つにまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

インフレ加速や人手不足、世界各地でのサプライチェーン(供給網)への未曽有の圧力を考えると、2022年は消費財ブランドや小売業界にとって引き続き試練の年になるだろう。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は3年目に入り、消費者の購買習慣や期待の変化も明確になりつつある。これを受け、消費財ブランドや小売り各社はより便利でスムーズな買い物プロセスを重視するようになっている。

こうした市場のトレンドに基づき、消費財ブランドや小売り各社が今年検討すべき5つの課題をまとめた。

1.デジタルエンゲージメント能力の強化

2.EC事業の収益性向上

3.オムニチャネル推進のための実店舗の強化

4.サプライチェーンの強靱(きょうじん)化と効率化

5.人手不足と人件費上昇の解決

消費財ブランドと小売りが検討すべき5つの戦略課題

1.デジタルエンゲージメント(関係)能力の強化

今の買い物プロセスの中心は明らかにオムニチャネル(ECと実店舗を統合させた販売方法)だ。オンライン消費はかつてないほど増え、米小売売上高に占めるECの割合は21年の15%から、24年には19%に増える見通しだ。デジタルのコミュニケーションも実店舗での売り上げにつながっている。

この新たな買い物プロセスに対応するため、ブランドや小売りは買い物客がいる場所で関与し、サポートし、販売できるシステムに資金を投じる必要がある。例えば、次のような方法だ。

・ECで顧客と接するフロントエンドと商品情報などのバックエンドを切り離す「ヘッドレス」ソリューション(システム)を活用して小回りの利くインフラを構築することで、デジタルコンテンツの配信とECの双方でデジタルチャネルを簡単に導入・廃止できるようになる。

・顧客とコミュニケーションするためのプラットフォーム「CPaaS」の活用により、ウェブサイトやアプリでコミュニケーションチャネルを開発・展開し、既存技術に新たな技術を搭載することもできる。

どちらのソリューションもオンライン注文を受けてのショートメッセージサービス(SMS)の自動配信からアプリ内の音声電話まで、増える一方のコミュニケーションチャネルにブランドや小売りがついていけるよう支援する。

さらに、オンラインの買い物客は小売りのサイト閲覧時には、自分との関係性が極めて高い「ハイパーレリバンス」なコンテンツと体験を期待するようになりつつある。このため、ブランドと小売りは費用を抑えながら大規模にパーソナライゼーションを展開できる能力を獲得する必要がある。

AIを使って生成するコンテンツは魅力的な選択肢だ。活用事例はマーケティングやEC、カスタマーサービス全般に及ぶ。

こうしたAI生成コンテンツは大手ブランドや小売りが導入を検討すべきテクノロジーの一つだ。この分野の未公開市場での活動は大幅に活発化し、デジタルコンテンツ業界の主要企業による関与度も高まっているからだ。

2.EC事業の収益性向上

パンデミックに伴うECの利用拡大により小売りの利益率は低下し、各社はテクノロジーへの多額の投資を迫られた。

今やこの衝撃を乗り越え、EC事業の収益性を高めるために以下の分野に注目している。

・フルフィルメント(受注発送)や配達事業を改善するため、ロボットを活用したフルフィルメントやマイクロフルフィルメント(小型の受注配送センター)、即時配達(オンデマンドデリバリー)などを検討すべきだ。

・購入に至る率を高めるため、AIを使った検索・推薦エンジンを実装し、オンライン買い物客との関連性が高い商品を提示し、提案してもよいだろう。こうしたシステムも平均客単価の上昇に寄与する。

返品もECの収益性向上を果たす上で重要な課題だ。ブランドや小売りはテクノロジーを活用し、この課題に対処している。

返品物流ソリューションは売り手から買い手までの在庫管理ツールとデータ解析により返品プロセスの管理を効率化し、合理化する。

・バーチャル試着などのオンライン可視化ツールも返品コスト削減につながる。こうしたツールはオンラインの買い物客が適切なフィット感やサイズの服を選べるよう支援するため、例えば返品リスクが減る。オンライン可視化ツールは特にファッション、家具、美容品で人気が高く、仏ロレアルなどの業界トップがこの分野に投資している。

3.オムニチャネル推進のための実店舗の強化

小売りは新しい買い物プロセスに対応するため、実店舗をオムニチャネル拠点へと転換している。実店舗は今や「購入場所」兼「フルフィルメントセンター」兼「実験の場」になっている。

こうした変化は店舗のレイアウトや陳列棚に置く商品、従業員の行動に影響を及ぼしている。依然として重要な収益源である実店舗をフル活用するため、小売りは実店舗の運営効率と販売効率を高めるテクノロジーに投資している。

「オムニチャネル・クライエンテリング(顧客応対)・プラットフォーム」は小売りが実店舗のデジタル化と業務自動化の一環として導入を検討すべきテックソリューションの一つだ。こうしたプラットフォームは店員が買い物体験をパーソナライズしたり、買い物客のオンラインとオフラインの行動をつないだりするのを支援する。未来の店舗に不可欠なシステムになるだろう。

実店舗のオンライン注文処理能力の強化も、オムニチャネルの導入推進に向けた重要な手段だ。

小さなスペースに合うよう設定できる自動マイクロフルフィルメントセンターなど、ロボットによるフルフィルメントを活用すれば、実店舗をフルフィルメントセンターに転換できる。ロボットは人間の店員よりも素早く注文品を収集できるため、こうしたシステムを導入すればオンライン注文の処理速度を上げ、コストを下げることができる。

需要予測と在庫の最適化など、オムニチャネルの品ぞろえ計画の策定や在庫切れのリスクを減らす商品管理を支援するソリューションも、顧客体験の強化や小売りの収益増加をもたらす。

4.サプライチェーンの強靱化と効率化

消費者の行動の変化、サプライチェーンの混乱、人手不足はサプライチェーンの障害になっている。このため、サプライチェーンの耐性や機敏性、効率を高めるシステムへの需要が高まっている。

テック導入の対象になるのは「需要予測&在庫の最適化」「食品ロスの追跡ソフトウエア」「シェルフライフ(保管寿命)の延長ソリューション」などだ。いずれも食品サプライチェーンでの廃棄を減らし、食料安全保障を強化する。

サプライチェーン全体のさらなる可視化もテック投資の主な対象だ。リアルタイムでの追跡や予測可視化のシステムを導入すれば、例えばサプライチェーンが混乱した場合に速やかな対応(と回復)が可能になる。

配達管理ソフトウエアや可視化プラットフォームは、配送プロセスの非効率な点を簡単に見つけ、排除できるよう支援してくれる。米フェデックスはサプライチェーンの可視化に投資している業界リーダーだ。同社は20年、米マイクロソフトと提携し、サプライチェーンと配達のリアルタイム分析機能を備えたプラットフォーム「フェデックス・サラウンド(FedEx Surround)」を開発した。

5.人手不足と人件費上昇の解決

21年の米国の労働コストは前年比4%上昇した。米労働省によると、これは二十数年ぶりの上昇幅だった。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)のデータでは、21年のEUの1時間当たりの平均労働コストは前年比1.7%上昇した。

こうした動向から、従業員が自分の仕事にもっとやりがいを持てるようにする一方で顧客にサービスを提供し続けるため、ブランドや小売りが自動化を進め、時間のかかる反復作業を廃止する必要性が高まっている。

例えば、大手各社が重視すべきシステムとして、カスタマーサービスで顧客のリクエストの60~70%に自動回答できるAIチャットボットがある。

商品陳列棚の電子棚札や管理テクノロジー、ロボットを活用するフルフィルメント、調理ロボットなど、実店舗のソリューションも反復作業の自動化に寄与している。

さらに、従業員の能力増強もブランドや小売りがテックを活用して労働市場の変動に対処できる分野だ。顧客のリクエストに関連する情報を担当者に速やかに提供したり、担当者に自動で回答を提案したりする担当者支援ツールや、小売りと店員の効率的で着実なコミュニケーションを可能にする社員のタスク管理システムなどがこれに含まれる。

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