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卓球と経営には共通点 水谷隼氏×日清紡HD河田会長

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

東京五輪の金メダリスト、水谷隼さんが日清紡ホールディングス(HD)本社を訪れ、河田正也会長と対談した。河田会長は一橋大学で卓球部に所属し、日本学生卓球連盟の会長を務めるなど卓球界を支える立場にいる。M&A(合併・買収)を通じてグローバルに事業を広げてきた日清紡HDのトップと、日本卓球界のエースが経営とスポーツをめぐる話題でラリーを繰り広げた。

水谷さん「河田会長はなぜ卓球を始めたのですか」

河田氏「クラブ活動としての卓球は大学に入ってからが初めてです。もともと運動部系でもなかったのですが、大学では体も鍛えたいと思ったのと、卓球が一番身近に感じられるスポーツだったので関わり始めたといったところですね」

「卒業後は会社の各拠点に卓球台が置いてあり、卓球好きのみんなが昼休みに集まってプレーしていたことはありました。女子の卓球部など、長い会社の歴史をみてもスポーツを奨励してきました。卓球台が各拠点に残っていたので、たまにやってたという程度です」

身近で誰とでも楽しめるのが魅力

水谷さん「卓球の魅力はどこにあると思いますか」

河田氏「水谷さんと違って『スポーツ万能で卓球も』というわけではなく、たまたま卓球が一番身近だっただけですが、勝ち負けだけではなく、ラリーを続ける楽しみもあります。何よりも身近で、誰とでも楽しめるスポーツです。頂点を極めた水谷さんにとっての卓球の楽しさは」

水谷さん「最初にのめり込んだのは小学生の時なんです。小学生が高校生や大人を倒すのが、他のスポーツでは考えられないですよね。それが卓球では可能なんですよ。逆に、ご年配の方が20歳ぐらいの学生を倒すなど年齢も関係ないし、性別も関係ない。どんな人でも勝てるというのが卓球の魅力だと思っています」

「自分が追う立場だった小学生の頃は、高校生や大人を倒すために必死でした。自分が年齢を重ねると追われる立場になります。そうするとプレッシャーを感じて苦しくなりましたが、楽しみでもありました」

河田氏「世界のトップレベルで、厳しい中でも楽しさがあるというのはどんな境地でしょうか」

水谷さん「うまくなればなるほど、自分のやりたいことができるようになりますよね。自分の狙ったコースにボールが飛ばせるようになる。うまくなればなるほど卓球が楽しいと思えるようになったので、どんどん強くなってどんどんうまくなりたいと思いました。現役が終わった今でもプレーする機会はあります。いつやっても楽しいですね」

河田氏「全然次元が違っていても、楽しさという点では共通なのかなと思いました」

大胆さと細心のプレーが経営に通じる

水谷さん「卓球の経験が今の人生に生きていることは何かありますか」

河田氏「人生にとってプラスになってると思います。卓球のおかげで、いろいろな人たちと巡り合い、交友関係が広がりました。卓球をする方たちは本当に人間的にも素晴らしい方たちが多いです。私のレベルで言うのもおこがましいですが、卓球をやっている方は、変化への対応が非常にうまいと思います」

「卓球は試合の中でもくるくると状況が変わってきます。ビジネスの世界では変化への対応力が非常に大事です。卓球は一進一退の攻防の中で、大胆さも細心のプレーも必要です。相反するようなプレーを抱き合わせて展開しないといけません。ビジネスや経営に通じると思っていますね」

水谷さん「卓球をしていると、すごく判断を求められる時が多いですよね」

河田氏「経営にとって大事なことは判断力であり決断力です。100%の材料というか情報を待ち『これでやろう』なんてことは、まずありません。その場その場で現実的にやらないといけませんし、迅速に対応しないといけません。卓球はとにかく相手があり、互いの攻防の中でいろいろ判断し、どう攻めて、どう守るのか決める必要があります。シナリオやストーリーを描きながら、相手があるから思う通りにはならなくても、自分としてシナリオの中でしっかりと判断していきます。経営と卓球の共通項は、かなりあると思います」

水谷さん「卓球は相手の心理的な部分を読み取らなければいけないですし、選手はそういうところが非常に優れていると思います。経営では心理的な部分を意識するのか、それともデータに基づいて行動するのか。どちらの比重が大きいのですか」

河田氏「経営で本当に成果を上げるためにはデータに基づいてシナリオを作り、戦略を立てていきます。同時に人間関係や人と人との関わりも大事です。片方だけではバランスが取れないので両方を兼ねるという点では、割と深いところで卓球と共通かもしれないですね」

水谷さん「何か新しいビジネスに挑む時に、結果は最初から予想しますか。私は『これを言ったらこういう結果が生まれるだろう』と最初に考えて発言するタイプだと思っています。自分の良いところでもあり、悪いところでもあるような気がします。勝負の時はあまり結果を考えずに行動することが大事だと思いますが、どうですか」

河田氏「それは結果のレベルによることだと思いますよね。レッスンで終わるレベルなのか。本当にその組織や会社全体、グループ全体に関わることならば、悠長なことを言ってはいられません。その場合はシナリオを立てて方向を決めた上で進めるので、気まぐれに『いちかばちか』ということはあまりないです。ただし柔軟に遠慮なく進めてもらいたい状況では、結果よりも伸び伸びとやってもらいたいことはあるので、やはり使い分けです」

日清紡HDは日本卓球協会と卓球日本代表チームのオフィシャルスポンサーになっている。6月19日には河田会長が日本卓球協会の会長に就任した。

水谷さん「企業がスポーツを支援するには、どんな方法が望ましいと思いますか」

河田氏「企業ごとに考え方があると思いますが、スポーツが人々の生活への寄与度が高いという思いは共通していると思います。スポーツは人々の健康や幸福度を高めることにつながります。人々の心をつなげて社会の調和に導くということは卓球だけでなく、どのスポーツにも言えます。企業として可能な範囲で関わり、しっかりと支援することが大事だと思います」

長期的な視点が重要

水谷さん「これからの卓球界に一番必要なことはなんだと思いますか」

河田氏「強化と普及ですよね。トップアスリートが世界で活躍し、実績があることで国民と感動を共有できますし、次代に向けて子供たちが『卓球をもっとやりたい』という思いになります。それは本当に大事なことだと思います。後は長期目線です。今年や来年ですぐに成果が出るというのではなく、しっかりとアクションプランを立てていますし、10年、20年単位で考えられた成果が五輪などの舞台で出ていると思います。良いところは引き継いでいきたいと思ってます」

水谷さん「ありがとうございます」

河田氏「水谷さんは卓球界への思いは本当に強いと思いますが、どのように関わっていきますか。あるいは卓球協会への要望は」

水谷さん「要望はありませんが、願望があります。自分が卓球選手として小学生からずっとやってきて、すごい肩身の狭い思いだったんですよね。野球やサッカーなどのメジャー競技に比べて、卓球選手というだけで肩身が狭い青春時代でした。卓球界のステータスが向上してほしいなと思っています」

河田氏「同感ですね。本当にそう思います。でも長い歴史の中で、着実にステータスは上がってきています。水谷さんを筆頭に、トップの人たちの活躍でできた流れをしっかりと受け継ぎ、他の競技と切磋琢磨(せっさたくま)しながら卓球自体の価値を上げることは非常に大事だと思っています」

水谷さん「トップに立つ人に必要な考え方について教えてください」

河田氏「やはり大きな視点で、それから長期的な視点で考えることです。その上で、より具体的現状がどうなのかも考えます。心構えとしては現場と多様性とコミュニケーション、これをしっかりと大切にしていきたいと思います。これらをトップとして重視しないといけません」

=対談のもようはBSテレ東「日経ニュース プラス9」で6月29日(水)に放送する予定です。

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