英シェルとBP、良質な炭素クレジット調達へ新興投資 - 日本経済新聞
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英シェルとBP、良質な炭素クレジット調達へ新興投資

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温暖化ガスの排出を森林整備などで相殺(オフセット)するカーボンクレジット(削減量)取引への関心が高まる一方、脱炭素効果に乏しい質の悪いクレジットが入り込む懸念が残る。そんな中、英国の石油大手2社、シェルとBPが良質なクレジットを安定調達するために、取引市場などを手掛けるスタートアップに投資している。両社のこの分野の取り組みをCBインサイツがまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

気象災害が頻発化し、激甚化しているのを受け、世界各地のあらゆる業種の企業が温暖化ガス排出量を「実質ゼロ」にする目標の達成に取り組んでいる。

例えば、シェルとBPは50年までに実質ゼロを達成する目標を掲げている。排出した二酸化炭素(CO2)を相殺する「カーボンオフセット」技術はその一助となる。

カーボンオフセットとは、土壌の生物多様性を回復させ炭素を土中に蓄える力を高める「リジェネラティブ(環境再生型)農業」や植林など温暖化ガス排出量を削減するプロジェクトへの投資により、企業の排出量を埋め合わせる仕組みだ。この分野は急成長しており、カーボンオフセットテックの新興企業による22年の資金調達額は前年比で600%以上増えて7億ドルに達した。企業が決算説明会でこの手段について取り上げる回数も増えている。

今回のリポートでは、シェルとBPがCO2排出削減に励む一方で新しいテックの恩恵も得るため、カーボンオフセット分野で何をしているのかについて取り上げる。

シェルとBPはカーボンオフセット分野で何をしているのか

シェル

シェルはカーボンオフセットの電子取引市場(マーケットプレイス)分野のスタートアップに積極的に出資し、買収している。同社の脱炭素化の取り組みは投資家や規制当局によって厳しくチェックされるため、カーボンオフセットの調達や定量化、認証について精査しているスタートアップから質の高いクレジットを購入することを優先している。

カーボンオフセットの取引市場やテックの分野はまだ初期の段階だが、シェルの取り組みは各分野でのスタートアップの進歩を支えている。

セレクトカーボン(Select Carbon、オーストラリア)

関係:買収

シェル・オーストラリアは20年、農家と共同で農地などの土壌に炭素を貯留させる「カーボンファーミング」に取り組む豪セレクトカーボンを買収した。セレクトカーボンは農家とカーボンオフセット市場の仲介役となり、農地の炭素吸収量の増加とオーストラリア市場でのカーボンクレジット創出を支援する。

カーボネクスト(Carbonext、ブラジル)

関係:出資

シェルは22年、カーボンオフセット取引市場を運営するブラジルのカーボネクストに4000万ドルを出資した。カーボネクストは自社プロジェクトから創出したクレジットを販売する。このクレジットは米認証機関大手ベラの基準を満たしている。シェルは出資の一環として、カーボネクストが発行したクレジットを優先利用できる。カーボネクストは米ウーバーテクノロジーズ、ブラジルのライズベンチャーズなどを顧客に抱えている。

BP

BPはクリーンエネルギー戦略では電気自動車(EV)の方に重点を置いている。とはいえ、BPベンチャーズや傘下のアクセラレーター、bpローンチパッドを通じた出資や買収により、カーボンオフセットテックを推進している。

米ファイナイト・カーボン(Finite Carbon)

関係:買収

BPは20年、北米を対象にカーボンオフセットの仲介役とマーケットメーカーを務めるファイナイト・カーボンの株式の過半数を取得した。同時に、ファイナイトはbpローンチパッドの育成プログラムに参加した。森林開発者はファイナイトのプラットフォーム「コアカーボン(CORE Carbon)」を活用し、森林のCO2貯留量の把握やモデル作成、森林のCO2インベントリー(排出・吸収量)管理、データ記録や認証プロセスの管理ができる。

BPはこの買収によって、自社のCO2排出削減効果を高めるために使うカーボンオフセットのクレジット増加に取り組んでいる。

米エクスパンシブ(Xpansiv)

関係:出資

BPベンチャーズは複数回にわたり、カーボンオフセット取引市場を運営する米エクスパンシブに出資している。米サンフランシスコに拠点を置くエクスパンシブはカーボンオフセットのクレジットや再生可能エネルギー証書(REC)、企業のCO2排出軽減を支援する「環境商品」の取引市場を築いている。同社は自社の取引市場への消費者の信頼を高めるため、ソフトウエア「デジタル・フィードストック(Digital Feedstock)」を活用している。このソフトウエアにより生データを標準化されたフォーマットにまとめ、各資産をブロックチェーン(分散型台帳)に登録する。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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