JR東日本、最終赤字1600億円 響く利用回復遅れ

JR東日本は28日、2022年3月期の連結最終損益が1600億円の赤字(前期は5779億円の赤字)になりそうだと発表した。従来予想は360億円の黒字だった。鉄道利用の回復が遅れ、一転して赤字見通しとなる。赤字幅は縮小するものの2期連続の最終赤字で、売上高は17%増の2兆570億円と予想を2690億円下回る。
期初時点では、鉄道利用は10月以降、新型コロナ禍前の8割程度に戻ると想定していた。だが、度重なる緊急事態宣言の延長などで回復が遅れ、4~9月の鉄道営業収入は19年同期比54%にとどまった。
宣言解除の影響などから11月には一部の新幹線の予約は5~6割程度まで改善する見通しだが、運輸収入は今期末時点でコロナ前の85%程度にとどまるとみる。「回復の時間のズレもふまえ、通期で赤字の下方修正となった」(伊藤敦子常務)。
同日発表した21年4~9月期の連結決算は、売上高が前年同期比12%増の8778億円、最終損益は1452億円の赤字(前年同期は2643億円の赤字)となった。営業損益では10億円の黒字を見込んでいたが、1158億円の赤字となった。
鉄道収入ではすでにコロナの影響があった前年同期比では増収となったものの、定期券収入は前年割れとなった。コロナ禍で働き方が変わるなか、首都圏での通勤利用の減少が響いた。
グループ全体では通期で700億円を計画していたコスト削減のうち、人件費の削減などで4~9月期で595億円分は減らしたものの、鉄道利用減までは補えなかった。
今後、臨時列車の減少による動力費の抑制などで、コスト削減を当初計画の700億円から約335億円分積み増す。合わせて設備投資も減らし、通期で計約1800億円の削減を見込み、「トップラインに応じてコスト、投資もしっかりコントロールする」(伊藤氏)。
不動産をめぐっては、4月にアセットマネジメント事業を担う新会社を設立。グループが所有するオフィスビルや開発物件を新会社の運営ファンドに売却し、資金を調達する方針を示している。
22年3月期の計画では、資産の流動化で数百億円規模を不動産・ホテル事業の営業収益に計上する見込みだ。運輸事業は今後も厳しい状況が続くが、コスト削減と保有資産の売却で収益改善を目指す。