身の回りに増えるIoT商品、その必要性は
先読みウェブワールド(瀧口範子氏)
IoT(インターネット・オブ・シングズ)という言葉が生まれたのは、1999年とされる。それから20余年。すでにIoTの歴史が語られるまでにその仕組みは広がり、製品も増えている。
開発者のあれこれのアイデアに感心しながらこの年月を過ごしてきたわけだが、中には疑問を覚えるものもあった。便利そうに見えて、実のところは不要と思うものもたくさんあった。

疑問に思ったIoT製品の一つが、冷蔵庫の中に卵がいくつ残っているか、それぞれの卵の賞味期限がいつなのかがどこからでもアプリでわかるものだ。卵トレイにメモでもつけておき、冷蔵庫の扉を開けて自分で見れば済むことを、わざわざネット経由にする必要はなかろう。
キッチンまわりは開発者がよく注目したようで、ネット接続して微妙な焼き具合をアプリから調整し、焼き上がったら教えてくれるトースターなども登場した。同じ米国の企業からは、同じくIoTのミラーも販売されていて、朝に髪を乾かす間にトーストが焼けたと教えてくれる。「なるほど」とは思うものの、「自分自身はいらない」と思う人も多そうなタイプの製品だ。
意見が分かれるのは、歯ブラシのようなIoT製品だろう。アプリを通じて、磨き残した部分や圧力が強過ぎる場合がわかるといった仕組みのものだ。
確かに便利かもしれないが、私としては歯を磨くごとにスマホを取り出して確認する面倒さが先に立つ。米ニューヨーク・タイムズでの評価でも、数百ドルという値段の高さやデータが共有されるリスクが指摘されていた。
意見が分かれるということでは、今年の家電・IT(情報技術)見本市「CES」で目立った電球も同じだ。
住人の睡眠の質や心拍数などをモニターしてくれる製品は、高齢者の健康管理用として家族には歓迎されるかもしれないが、ちょっと抵抗感がある。
今や毎日の水の摂取量を教えてくれるスマートボトルまである。しかし、これも自分で管理すればいいことではと思ってしまう。

ネット上にはIoT製品に対する個人の感想がたくさんある。様々なものがネットに接続されていることで、余計に手間がかかっているという実例 や不満も見つけられて面白い。
今後もネット接続されていないものを探すことが難しいと感じるくらいIoT製品が身の回りに増えていくのだろう。一方でプライバシーやセキュリティーの問題は未解決の状態だ。
見えないところでネット接続された仕組みが広まっていて、知らない間に自分たちの行動や振る舞いのデータが取られる懸念も指摘されている。20年余りのIoTの進化の速さに驚くばかりだ。