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日米最大海底ケーブル巡り、経済安保で復権狙うNTT

日経ビジネス電子版
動画配信サービスやSNS(交流サイト)、ネットショッピングで使わない日は無いインターネット。これを支える太平洋最大通信容量の海底ケーブルをNTTなどが2024年末にも稼働する。米中対立やウクライナ情勢の緊迫化などで経済安全保障面での関心も高まっている。

12日、NTTは日米間で最大の通信容量となる海底ケーブルを敷設・運営する新会社設立を発表した。NTTグループと三井物産が37.5%ずつ、JA三井リース(東京・中央)が約25%出資し、15日に設立した。

2024年末の運用開始を目指す新たな大規模ケーブルの名称は「JUNO(ジュノ)」。米カリフォルニアから東京・大阪に近い千葉県と三重県を結び、総延長距離は約1万キロメートルとなる。通信容量は毎秒約350テラビット(Tbps)。これは4K動画を同時に875万回を同時で再生できる容量で、太平洋間で最大規模。23年に米グーグルが開通を目指す、初の日本~カナダ間の海底ケーブルの240Tbpsの容量も上回る。建設総費用は約4億5000万ドル(約620億円)を見込む。

21日、NECはJUNO向けに光海底ケーブルシステムを供給すると発表。新たに開発した低消費電力の中継器と、1本の海底ケーブルに伝送用の光ファイバーを最大40本入れることで大容量のデータを伝送できる技術を採用し、日米間として最大の通信容量を可能にした。

通信で国境をまたいでネットワークを形成するインフラには人工衛星もあるが、海底ケーブルの方が圧倒的に高速だ。そのため国際通信は海底ケーブルが99%を占め、「地球の大動脈」と呼ばれる。米調査会社のテレジオグラフィーによると米豪間を除く米国~アジア間の国際通信需要は21年で223Tbpsだったが31年には4938Tbpsと22倍に膨らむという。

GAFAから主役奪還狙う

「政治的安定性の観点で日本を経由するケーブルの価値はマーケットでも高まっている」とNTTグローバルビジネス推進室長の尾﨑英明氏は力を込める。

ここ5年間、アジア~米国間の海底ケーブルは台湾やフィリピンを経由しシンガポールにつなぐ、「ジャパン・パッシング(日本外し)」のようなプロジェクトが目立ったという。

さらに「GAFA」と呼ばれる米グーグルや米メタ(旧フェイスブック)などが直接海底ケーブル敷設に乗り出すようになり、通信事業者と立場が逆転した。「日本はアジアの玄関口。通信のハブという立ち位置を維持するだけではなく、向上させたい」(新会社の社長に就くNTTリミテッドの佐藤吉雄氏)の言葉は、主役の座をもう一度取り戻さねばならないという危機感の裏返しだ。

慶応義塾大学の村井純教授は「太平洋のケーブルは00~10年代に多く造られたが、そろそろ更新時期だ。今回のプロジェクトは、日本経済の活性化にもつながる」と期待を寄せる。

今回のNTTなどのプロジェクトでつなぐ千葉県の印西市では、インターネット用のサーバーやデータ通信装置などを備える大型のデータセンターの建設が続いている。

20年にはグーグルやメタなどが進めていた米国と香港の太平洋横断海底ケーブル敷設に米司法省が待ったをかけ、中国排除の強硬姿勢を見せた。今年1月には南太平洋の島国トンガで発生した海底火山の噴火で海底ケーブルが損傷し、重要性が再認識された。

日本では岸田文雄首相が21年、これまで太平洋側に集中していた海底ケーブルに加え日本海側にもケーブルを敷設することで日本を周回する海底ケーブルを3年程度で構築すると表明している。

日本は米中の中間に位置する海洋国家だ。地政学的な緊張感が高まる中、地球の大動脈を巡る市場で存在感を取り戻せるか。今回のプロジェクトは想像以上に重要な意味を持っている。

(日経ビジネス 西岡杏)

[日経ビジネス電子版 2022年7月26日の記事を再構成]

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