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「転職の思考法」に普遍的ヒント 20万部突破の要因

ワンキャリア取締役 北野唯我氏インタビュー

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ダイヤモンド社が2018年に刊行した「このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法」が20万部(電子版含む)を突破し、ロングセラーとなっている。7月には「マンガ 転職の思考法」も発売された。市場のニーズを長らくつかみつづける理由はどこにあるのか。同作の筆者で就職情報サイト運営のワンキャリア(東京・渋谷)で取締役の北野唯我氏に話を聞いた。

――若者の転職が珍しくないなか、執筆の経緯は。

「大企業で働けば安泰という考えが崩れ、新卒一括採用や終身雇用を前提とする日本型雇用が労働者にとって違和感のあるものになっている。若い世代では特に転職を考えるのは普通で、約2年前のインタビューで6割程度の学生が転職を前提に就職活動をしているとの結果が出たこともある。10~20年前には考えられなかった現象だ」

「そこで転職のやり方より、そもそものキャリアの思考法を世の中に提示すべきだと考えた。漫画版は『転職はしたいが自分には武器がない』と感じている人でも読みやすいものとして作った」

――ヒットの要因をどう分析していますか。

「世の中で終身雇用は終わったとの見方は多いが、なぜ終わったのか、そのうえで個人が何をしたらいいのかについて、言い切った本がこれまではなかった。そこについて個人や企業が求める答えを出した本だったからだろう。時代の流れにも合っていてタイミングがよく、初めての転職にフォーカスしたのも功を奏したのかもしれない」

――反響はどうですか。

「企業から10件程度の講演依頼があった。ほかにも同書を読んで就職先を決めた人や転職した人からの声をもらった。転職に限らずキャリアそのものの思考法を書いた本なので、学生こそ読むべきだとの意見もあった」

――単なるノウハウではなく、思考法に焦点を当てたきっかけはありますか。

「本や書籍を出すことの価値は『自分の寿命を超える』ことだ。自分の寿命より先の物事を考えるなら、単なるやり方ではなく思考の原理原則が必要になる。今の時代にはそういう原理原則が求められていると感じたし、より普遍的で役に立つと考えた」

「最近、転職の理由が現状への不満のようなネガティブなものではなく、『自分らしく働きたい』といった前向きなものが増えていると聞いたことがある。これはキャリアの自立が進んでいるということだ。与えられた環境下で不満を言うだけではなく、自分で道をつくっていかないといけないと思う人が若い世代で出始めているのだろう」

――転職の現状を踏まえて同書で特に訴えたいことは。

「一つ選ぶとしたら『いつでも転職できるような人間がそれでも転職しない会社。それが最強だ』という言葉だ」

――日本経済の課題や今後の展望は。

「転職も含め外部から来た人の力を最大化するための方法論を確立しないと、日本企業に未来はない。グローバルで見れば出身会社や性別、年齢などで出世の確率が変わるのは、日本経済にとっても明らかな機会損失だ。力のある突き抜けた個人を経営に生かせなければ、グローバルで戦っても勝てるわけがない。働く人がどの場所を選んでも活躍できて、少しでも仕事に対して前向きになるような考え方を広めていきたい」

若者の危機感を映す


若者にとって転職は今や珍しいことではない。総務省の「労働力調査」によると、2020年の就業者に占める転職者の割合は15~24歳が10.6%、25~34歳が6.7%と、2~4%台の他の年齢層に比べて高い水準だ。
若者は家庭などを持たないため転職しやすい面もあるが、大きな要因は考え方の変化だ。「大企業にさえいれば生活は安泰だ」という前提はすでに崩れている。
かつて「社員は家族」との考え方があったが、それは日本経済が順調に成長してきた時代の産物だ。消費税率の引き上げなどにより、長らく不況に陥っている現代の日本経済では会社に身を委ねたところで生活が維持できる保障はどこにもない。
組織や国に頼って文句を言うばかりではなく、まずは自らの手でキャリアを切り開き、未来を作り上げる必要があるとの若者の危機感が同書のヒットの裏側にはある。
(大貫瞬治)

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