テレワークでパソコン快適に使う メモリー16GBが理想
最新パソコンスペックガイド メモリー編
パソコンのメモリーはどれくらいの容量を搭載すればいいのだろうか。少し前まではメモリーを4ギガバイト(ギガは10億、GB)しか搭載していないパソコンが多かったが、最新世代のパソコンは8GBがほぼ標準になりつつある。これは負荷の大きい複数のアプリを同時に使うマルチタスクが当たり前になるなど、パソコンの使い方が時代の変化とともに変わってきたからだ。
メモリー増設にはスペックの理解が不可欠
例えば、テレワークなどでオフィス文書やPDFなどを見ながら「Teams(チームズ)」や「Zoom(ズーム)」などのビデオ会議アプリを利用する場合、メモリーは少なくとも8GB、余裕を見込めば16GBが望ましい。メモリー容量が多くなれば、ワードやエクセルなどのオフィスアプリの操作も快適になる(図1)。メモリーを16GBにしても無駄にはならない。

メモリーは、CPU(中央演算処理装置)がデータを効率良く処理できるように、HDDやSSD、ネットワークの情報などを一時的に記憶し、CPUに受け渡す役割を担っている。図2の通り、CPUを料理人に例えると、メモリーはまな板のようなもの。まな板が小さいと作業効率が悪くなる。メモリー容量が不足すると、パソコンの動きが鈍くなってしまうのもこのためだ。

パソコンの動きが以前よりも遅くなったと感じる場合、まずはメモリーの増設を検討しよう。
メモリーにはさまざまな規格や形状があるので、増設の際には自分のパソコンに合ったものを正しく選択する必要がある。そのためにはスペックの意味をよく理解しておくことが重要だ。
現在の主流はDDR4 SDRAM
図3はメモリーのスペック表記の例。メモリーのスペック欄には、「容量」「モジュール規格」「メモリー規格」「モジュール形状」「デュアルチャンネル対応の有無」などが掲載されている。以下、順に解説していこう。

現在のメモリーの主流規格は、2014年くらいから普及が始まった「DDR4 SDRAM」だ。
DDR SDRAM(ダブル・データ・レートSDRAM)は、2000年代初頭までパソコン用メモリーの主流であった「SDRAM(シンクロナスDRAM)」をベースに性能を向上させたものだ。図4の通り、SDRAMはクロック周波数に同期してデータを読み出す仕組みだ。これに対して、DDR SDRAMはクロックの立ち上がりと立ち下がりの両方でデータを読み出す。「ダブル・データ・レート」の名が示す通り、DDR SDRAMは、SDRAMの2倍の転送速度を実現した。

DDR4 SDRAMの「4」は、4世代目のDDR SDRAMであることを意味している。DDR SDRAMは世代が1つ新しくなるごとに、理論上の最大データ転送速度が2倍となる(図5)。なお、次世代のDDR5 SDRAMはすでに製品化されており、2021年度中には対応CPUがリリースされる予定だ。

チップ規格の数値を8倍するとモジュール規格に
メモリーのスペックでは、「DDR4-3200」と「PC4-25600」などと、チップ規格とモジュール規格が混在してわかりづらい。この違いも理解しておこう(図6)。

例えば、「DDR4-3200」の「3200」は、メモリーチップの動作周波数を表す(単位はMHz)。一方、「PC4-25600」の「25600」は、メモリーモジュールのデータ転送速度を表す(単位はMB/秒)。メモリー動作周波数とデータ転送速度の間には、覚えやすい関係がある。メモリー動作周波数の数値を8倍するとデータ転送速度の数値になる。
メモリー動作周波数からデータ転送速度を求めるには、メモリーのバス幅が64ビットなので、まずはメモリー動作周波数の数値を64倍する。これをバイトに換算するために8で割ると、データ転送速度が得られる。つまり、メモリー動作周波数を8倍すればいいわけだ。DDR4-3200の場合、3200の8倍でPC4-25600となる。
メモリーは2枚1組でデュアルチャンネルに
メモリーモジュールの形状には、主にデスクトップパソコン向けの「DIMM(Dual Inline Memory Module)」と、主にノートパソコン向けの「SO-DIMM(Small Outline DIMM)」がある(図7)。メモリーを購入する際には間違えないようにしたい。薄型ノートなどではメモリーチップが基板に直付けされているものもある。その場合はメモリーの交換や増設はできない。

最近のCPUはほぼすべて、2枚のメモリーに同時にアクセスすることでデータの転送速度を向上させる「デュアルチャンネルメモリー」という技術に対応している(図8)。

デュアルチャンネルメモリーに対応したCPUは、図9の通り、メモリーをシングルチャンネルにすると、性能が少し落ちるので要注意だ。

なお、低価格のパソコンでは、メモリーがシングルチャンネルにしか対応していないものが多い。そういったパソコンではCPUの性能をフルに生かしきれない。新しくパソコンを購入する場合は、メモリーのスペック欄に「デュアルチャンネル対応」と書かれているものを選択しよう。これは重要な選択ポイントだ。
DDR4とDDR3に互換性なし
メモリーを増設・交換する際の確認項目および注目点を図10にまとめた。

まずは、メモリースロットの有無など、メモリーの増設・交換に対応しているか確認する。次に対応メモリーの規格を調べる。DDR4メモリー対応のパソコンにはDDR3メモリーを搭載できないし、その逆も同じだ。そもそも、DDR4とDDR3とではピンの数や形状も異なる。メモリーを増設する際には、規格の違いに注意しよう。
さらに、パソコンによって搭載できるメモリーの最大容量が決まっているので、その点も要確認だ。
性能を最大限発揮させるためには、対応する最大転送速度のモジュールを搭載し、同じ容量の2枚構成でデュアルチャンネルにする。ただし、メモリースロットが1基しかない場合はシングルチャンネルで動かすしかない。
ノート用メモリーの相場は図11の通り、高速なPC4-21300の8GBメモリーでも6000円台から入手可能。ノート用メモリーは、パソコン専門店や家電量販店で購入できるほか、AmazonやNTT-X Storeなどの通販サイトでも購入できる。

なお、少し前までは搭載メモリー容量でパソコンの価格が大きく変わったが、最近では以前ほど差がなくなっている。図12は、メモリー容量をカスタマイズして購入できるレノボ・ジャパンの「ThinkPad E14 Gen 2」の例だが、4GBと8GBの価格差は約4000円、8GBと16GBの価格差は約7400円しかない。もちろん、メーカーにより差はあるものの、メモリー容量によるパソコンの価格差は以前ほど大きくない。購入時には、なるべく大容量のメモリーを確保しよう。

メモリー不足の疑いはOSの機能で確かめる
ウィンドウズは、メモリーの空きが不足すると、利用頻度の低いメモリー上のデータをSSDやHDDなどに退避させて空きを確保する。退避させたデータは必要になった際に、再度ストレージからメモリー上に戻す。この一連の動作を「スワップ」と呼ぶ(図13)。

スワップは、メモリーより格段に速度が劣るストレージの読み書きを伴うため、頻発するとパソコン全体の動作が重くなる。メモリー不足のパソコンが重いのは、ほぼスワップが原因だ。
自分のパソコンがメモリー不足かどうかはウィンドウズ10のタスクマネージャーで確認できる(図14)。まず確認するのは、「コミット済み」欄の数値。右側の数値は実メモリーとページファイル(ストレージ上に作成されたデータ退避領域)を使用したうえでウィンドウズとアプリが確保できる最大容量。そのうちの現在の使用量が左の数値だ。これらの数値を右上にある実メモリー搭載容量と比較する。コミット済みの左側の数値が実メモリー搭載容量の7割以下で、右側の数値も2倍未満であればスワップを気にする必要はない。

スワップの発生状況はリソースモニターの「ハードフォールト/秒」のグラフで確認できる(図15)。ハードフォールトはスワップの発生頻度のこと。グラフの動きが激しい場合は、スワップが頻発していることを示している。

ビデオ会議が快適に行える容量は?
現状、メモリーを大量に消費する作業としては、各種資料を閲覧しながらのビデオ会議が考えられる。実際にどれほどのメモリー量が必要になるか、「Teams」での会議に参加し、各種アプリで資料ファイルを開いた状態で、メモリーの使用状況を調べた(図16)。

4GBでは、実メモリーとページファイルを足したコミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量を大きく超え、明らかにメモリー不足の状態に陥った。スワップも頻発している。
8GBでは、コミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量の7割以上に達してはいるが、コミット済みメモリー容量が実メモリー容量を大きく上回っておらず、スワップの発生頻度はさほど多くない。メモリーは取りあえず足りていると判断できるが、十分に余裕があるとはいえない状態だ。
16GBでは、コミット済みメモリーの使用量が実メモリー容量の半分以下で、スワップもほぼ発生していない。メモリーには十分な余裕がある。以上の点からビデオ会議を快適に行うには、メモリーは8GB以上が必須、余裕を見込んで16GBが望ましい。
10月5日にリリースされたウィンドウズ11の仕様を考えてもメモリーは16GB以上が望ましい。11のメモリー最小要件は4GB(図17)。過去の例から、ウィンドズを快適に動作させるには最小要件の2~4倍のメモリー容量が必要。これからパソコンを長く使いたいなら、やはり16GBがおすすめだ。

(ライター 滝伸次)
[日経PC21 2021年11月号掲載記事を再構成]
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