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プラ原料、CO2から生産 微生物活用し脱炭素に貢献

Next Tech2050

排ガスから微生物がプラスチックを作る――。広島大学の加藤淳也特任助教と中島田豊教授らは産業技術総合研究所と共同で、微生物を使って水素と二酸化炭素(CO2)または一酸化炭素(CO)から、化学物質の「アセトン」を合成する手法を開発した。アセトンはプラスチック原料や有機溶媒に広く使われている。政府が掲げる2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標の達成に貢献できると期待している。

合成ガスから微生物を使ってアセトンを作る=広島大学提供

近年、微生物を使いCO2などのガスから別の有用物質を作り出す発酵技術が注目を集めている。温暖化の原因となるガスを化学物質に変えられる利点がある。化石資源から作る化学物質を、別の手段で作れるようになれば、温暖化ガスの排出抑制に役立つ。

研究チームはCO2またはCOからアセトンを合成する微生物を開発した。アセトンは家電製品や自動車部品などに使われるポリプロピレンなどの原料になる。産業には欠かせない物質で、現在は主に石油から製造している。石油を使わずにアセトンを作れるようになれば、プラスチック生産の脱炭素化につながるとみている。

研究チームが着目したのは酢酸を作る「好熱性ホモ酢酸菌」と呼ぶ微生物だ。CO2またはCOから、水素をエネルギー源に酢酸を作る能力を持つ。この微生物の遺伝子を改変し、アセトンも作れるようにした。

微生物が備える酢酸を作る2つの代謝経路のうちの一方に関わる遺伝子を除いた。さらに別の遺伝子を導入し、酢酸ができる途中で作られる物質からアセトンを作り出せるようにした。この結果、酢酸の生成を抑えてアセトンを合成できるようになった。

開発した微生物10グラムで、1時間につき1グラムのアセトンを作れる。試算では1トンのCO2と121キログラムの水素から、1日当たり最大で約400キログラムのアセトンを生産できるという。中島田教授は「量産体制を整えれば石油から作る方法と同程度のコストで合成できる可能性がある」と話す。

廃棄されたプラスチックなどを燃やした際にできる「合成ガス」にはCOや水素などが含まれる。開発した微生物はこれをもとにアセトンを作ることも可能だ。廃棄物の処理時に出る排ガスも活用できると期待している。

開発した微生物はセ氏55~65度で培養できる。アセトンの沸点である56度より高い温度にすることで、アセトンができると同時に気体となって簡単に回収できる。分離・精製などの手間は不要だ。アセトンの連続生産による低コスト化が可能とみている。

今後は導入する遺伝子を改良し、アセトンの製造効率を上げる方針だ。開発した微生物は酸素に触れると死んでしまう。遺伝子導入技術を用いて工場でも扱いやすくできれば、量産体制の確立につながる。企業と連携して実用化に向けた研究開発を進める。

中島田教授の目標は30年に実用化することだ。「将来、石油が使えなくなったときに今の生活水準を維持するためには必須の技術だ」と中島田教授は強調する。

欧米先行、日本でも本格化

微生物を使って有用な化学物質を作り出す技術は欧米を中心に開発が進んできた。微生物を使いトウモロコシを原料にエタノールを作る技術などが代表例だ。二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)をもとに微生物が化学物質を作るガス発酵技術も2010年代から盛んになってきた。日本でも、微生物を使ってたんぱく質や化学物質作りを目指す東京大学発のスタートアップ、CO2資源化研究所(東京)などが登場した。

同社は遺伝子を組み換えた微生物を使い、ポリ乳酸などのプラスチック原料を作る技術を開発している。企業と連携して1年~1年半後をめどに、微生物由来のプラスチックを使った総菜のパッケージを、コンビニエンスストアなどで実用化することを目指している。同社の湯川英明代表は「二酸化炭素からできたプラスチックが、現実に製品になっているのを早く消費者に見せたい」と話す。

脱炭素に向けた動きは欧米が先行してきた。日本でも50年に温暖化ガス排出を実質ゼロにするという目標を政府が掲げてから、取り組みが本格化しつつある。ジェット機の燃料を廃プラスチックなどから作る再生燃料に切りかえようという動きも出ている。有望な新技術が普及する余地は十分にある。(下野谷涼子)

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