サウナの効能、専門家が解説 「ととのう」状態とは?
サウナ業界用語「ととのう」とは?
サウナは、主にフィンランド風の熱気浴・蒸気浴の風呂。日本では高温低湿のドライサウナが多い。
「ととのう」という言葉に明確な定義はないが、サウナに入って体が温まった後に水風呂と外気浴で体を冷ますサイクルを繰り返すことで、心身のコンディションが良くなった状態を指す。「サウナにおける究極の快感」とされる。
漫画家タナカカツキさんが2015年から連載する、サウナの魅力を描いた「マンガ サ道 ~マンガで読むサウナ道~」(講談社=モーニングKC=)で登場する主人公の「ととのった~!」というセリフがはやり、認知度が高まった。
新型コロナウイルス禍でもサウナに入る若者が増え、「ととのう」が21年の新語・流行語大賞にノミネートされた。
一般的に「サウナ→水風呂→外気浴」を1セットとし、3~4セット行うことで、ととのう状態が促進するとされる。後述するが、サウナと水風呂の交代浴で交感神経と副交感神経が強制的に切り替わり、自律神経のリズムが通常の状態に戻るからだと指摘する専門家もいる。
基本的なサウナの入り方は?
汗が多く出る空間であるサウナには、入る前に体をしっかり洗うのは言うまでもない。入る前は体の水分を十分に拭き取っておく。体がぬれたままだと水分が蒸発し、体が一時的に冷やされ、発汗しにくくなるためだ。

サウナ室に入ったら、心身をリラックスさせ、座面に座り、足を着けるのが基本姿勢だ。一般的な入室時間は8~12分が適切とされるが、個人差がある。あくまでも目安としてほしい。無理は絶対に禁物だ。「汗がだらだら出るまで我慢する」という根拠のない目標も絶対視しないでほしい。1セットごとの水分補給も忘れずに。
サウナ室から出たら汗を流して水風呂へ。ただ苦手な人は多い。高血圧や苦手意識のある人は無理して入らなくていい。サウナから上がったら、30分ほど安静にして、ととのえよう。
医学的に「ととのう」とは、「体が興奮状態で出るアドレナリンが血中に残る中、自律神経はリラックスした副交感神経優位の状態」を指すと考える。

サウナに入ると、体は「温かさ」を感じ、副交感神経が高ぶる。その後「熱さ」を察知、今度は体を興奮させる交感神経が急上昇。この時、身体を疲れにくくさせるホルモン「アドレナリン」も分泌される。
次に、体を冷ますことで「命の危険はなくなった」と考え、再度、副交感神経が優位になる。直前まで交感神経優位だったため、アドレナリンが残り、リラックスもしているという、日常では感じられない、まれな「ととのう」状態が生まれる。
サウナには医学的に効果があるとのリポートが多数ある。心筋梗塞、認知症、うつ病の予防効果や、筋肉痛、脳疲労の軽減などの報告も多い。ただ、過度の刺激を受け続けると、依存症に陥る危険性がある。サウナはあくまで健康効果を得るためと理解してほしい。 (談)

お風呂やサウナなどの「温熱浴」は体にいいのは間違いない。必要なのは「刺激に対して体を慣らす」ことだ。
体の安全面を考えると、いきなり高熱のサウナに入るのではなく、入浴したり、かけ湯やシャワーをしたりして、先に体を温めてからサウナに入るのが理想だ。

特に水風呂は、体に危険な影響を及ぼす可能性があり注意が必要だ。サウナに入って体の血管が開いた状態で心臓内の血液量が少なくなっている時に水風呂に入ると、寒冷刺激で血管が急に収縮して細くなり、加えて水圧がかかる。そのため体中の血液は一気に心臓へ戻る。すると血圧上昇、心臓への血液量が増え、心臓に大きな負担がかかる。
50代以上は動脈壁が硬い人も多く、急激な血管の伸縮に耐えられず、脳血管が破れたり、詰まったりして、脳梗塞などの原因になる可能性もある。体の異変を感じたら、我慢せず「サウナは1回で十分」という気持ちでいてほしい。(談)
(日経ビジネス 小原擁)
[日経ビジネス電子版 2022年4月25日の記事を再構成]
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