/

コロナ禍のコミュニケーション

SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

コロナ禍が始まって以来、仕事が変わってきている。リモートワークが増えたことが大きいが、コミュニケーションにも様々な面で影響がある。仕事の内容もルーチン業務から大幅な戦略の変更まで多岐にわたってコロナ禍による変化への対応を迫られることが多い。

コミュニケーションの方法だけでなく、議論の内容も変わることで相手とのやりとりも変化した。それが長年一緒に仕事をしてきた人物だとしても、意外な一面を発見したり、改めて意見の相違を認識したりと予想しなかったことが起こる。一人一人の違いという多様性だけでなく、1人の人間の複数の側面を再認識することが求められているようである。

最近の体験では長年一緒に仕事をしてその人の意見は聞かなくてもわかっている、と思っていた相手と会社の戦略を議論しているときに、意外な答えが返ってきて戸惑ったことがあった。その人とはこれまでも戦略の議論を重ねてきた。しかし、今回はコロナ禍への対応でより大きな変化を伴う議論であったので、違う側面が表れたということなのであろう。

このとき私は正直、戸惑った。どんな言葉を発したらいいかに窮してしまうほどであった。しかし、その理由は私自身が発想の転換をはかれなかったためだと思う。要は、私の一方的な思い込みが違っていたという結果である。

普段からダイバーシティーを推進しよう、多様な価値観を受け入れようなどと言っていたが、ちょっとした予想外の出来事への対応でこのような始末である。自分の思い込みや価値観を変えることがいかに難しいかという例である。

では、なぜ変えられないのであろうか。びっくりして変えられなかったということもあるだろう。しかし、もっと本質的な部分ではないだろうか。それは、自分の考えを変えなければならないことへの恐怖である。

前述の例では私はその人とのこれまでの付き合いの中でどのような展開になるかを予想していたが、それが外れてしまった。つまり、自分の経験に基づいて導き出していた答えが違っていたのだ。これを変えなければならないとなると、自分の経験自体を否定することになる。

しかし、客観的には大したことはなさそうでも、急に客観的になるのは難しい。自分の前提が間違っていたことに対して否定をすることには恐怖のようなものが伴うのではないかと思う。自分の考えを変えるという恐怖を克服することが難しいのである。

これはさまつな例であるが、こういうことが、多様性を受け入れる大きな障害になっている気がする。インクルーシブな社会を目指すのであれば、私たちは自分の考えや前提を覆すという恐怖を克服しなければならないのである。

[日経産業新聞2022年5月16日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経産業新聞をPC・スマホで!

スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できます。直近30日分の紙面イメージを閲覧でき、横書きのテキストに切り替えて読むこともできます。初めての方は、まずは1カ月無料体験!

日経産業新聞をPC・スマホで!

スタートアップに関する連載や、業種別の最新動向をまとめ読みできる「日経産業新聞」が、PC・スマホ・タブレット全てのデバイスから閲覧できます。直近30日分の紙面イメージを閲覧でき、横書きのテキストに切り替えて読むこともできます。初めての方は、まずは1カ月無料体験!

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン