パソコン選びで大切なCPU 性能はここを見れば分かる
最新パソコンスペックガイド CPU編
パソコンの心臓部はCPU(中央演算処理装置)。自分に最適なCPUを選択するためには、CPUのスペックの意味を正しく理解しておく必要がある。スペックの意味を理解していれば、スペック表を見るだけで性能の違いなどを即座に判断できる。ノートパソコンのCPUのスペックで注目すべき点は、「型番(製品名)」「動作周波数」「コア数/スレッド数」の3つ(図1)。以下、これらの見方について詳しく解説する。

型番をつぶさに見れば性能は把握できる
パソコン向けCPUの主なメーカーは、Intel(インテル)とAMD(エーエムディー)。両社のCPUの型番は、性能や特徴の違いを判別できるように、一定のルールに基づいている。まずはインテルの型番の読み解き方から見ていく(図2)。
インテルCPUの型番は、「ブランド名」「シリーズ名」「プロセッサーナンバー」「世代」「カテゴリー」などで構成される(図3、図4)。



ノートパソコン向けCPUの主なブランドは、性能の高い順に、主力モデルのCore(コア)と低価格パソコン向けのPentium(ペンティアム)とCeleron(セレロン)の3つ(図5)。

PentiumとCeleronにはCoreと同じアーキテクチャーを採用するものとタブレットや超低価格パソコン向けのAtom(アトム)系統のものがあるので注意が必要。どちらの系統であるかは、図6の通り型番で判別できる。

Coreブランドには、3次元(3D)ゲームやクリエーター向けウルトラハイエンドの「i9」、動画編集や高画質写真編集などを想定したハイエンドの「i7」、汎用性の高いアッパーミドルの「i5」、ビジネス用途に最適なミドルレンジの「i3」の4つのシリーズがある(図7)。「9」や「7」などの数字が大きいほど高性能と覚えておこう。

「1165」「1180」「11850」などの4桁ないし5桁の数字はプロセッサーナンバーで、同ブランド、同シリーズの中での位置付けを表している(図8)。こちらも数字が大きいほど高性能だ。

このうち、「11700」の「11」や「8700」の「8」など、Coreブランドのプロセッサーナンバーの最初の数字は世代を表している(図9)。これはCPUの処理性能に大きく関係するので、よく覚えておこう。同ブランド、同シリーズにおいては、世代が新しいほど高性能だ。

注意したいのは、型番のカテゴリーの表記だ。カテゴリーは「性能重視型」や「省電力重視型」などCPUの種類を示すもの。第11世代と第10世代のIce Lakeコアの型番などでは、カテゴリーを「5」「0」などと数字で表記する。これに対して、第10世代のComet Lakeコア以前などでは、「U」「Y」などとアルファベット表記で最後に付ける。
アルファベット表記のカテゴリーの意味を、図10に示した。現行のCPUでは、処理性能重視型の「H/HK」、性能と省電力性のバランスを重視した一般ノート向けの「U」、超省電力のモバイルパソコン向けの「Y」の3つがある。

なお、同ブランド、同シリーズでもカテゴリーが違うと、TDP(熱設計電力)が異なり、性能や消費電力が大きく違うので要注意。一般的に性能が高くなるほど消費電力が増え、発熱量も大きくなる。
基本的な見方はAMDもインテルと同じ
AMD CPUの型番もインテルCPUと同様に「ブランド名」「シリーズ名」「プロセッサーナンバー」「世代」「カテゴリー」で構成されている(図11)。
「Ryzen 7 5700U」であれば、先頭の「Ryzen」がブランド名、次の数字「7」がシリーズ名、次の4桁の数字「5700」がプロセッサーナンバー、プロセッサーナンバーの先頭の数字「5」が世代、末尾の英字「U」がカテゴリーを示している(図12)。


AMDのノートパソコン向けCPUの主なブランドは、性能の高い順に、主力モデルのRyzen(ライゼン)、低価格パソコン向けのAthlon(アスロン)、タブレットなどに向けたA(エー)の3つ(図13)。RyzenとAthlonは高性能なZenアーキテクチャーを採用している。Aは旧世代のアーキテクチャーを採用したものだ。

Ryzenブランドには、「9」「7」「5」「3」の4つのシリーズがある(図14)。

この数字はインテルのCoreブランドを意識したもので、9がi9対抗、7がi7対抗、5がi5対抗、3がi3対抗のモデルだ。プロセッサナンバーの数字が大きいほうが高性能である点も、インテルCPUと同じだ(図15)。

プロセッサーナンバーの先頭の数字が世代を示していることもインテルCPUと同じだが、注意すべき点がある。AMDのノートパソコン向けCPUでは、例えば、先頭の文字が「2」であった場合、その数字から「1」を引いた数字が世代となる。
これはノート向けの第1世代Ryzenがデスクトップ向けから半年以上遅れて登場したことに起因する。内蔵GPUを搭載した新世代ノート向けRyzenであることを強調するために、第1世代のGPU非搭載のデスクトップ向けRyzen「1×××」に対し、「2×××」とノート向けの第1世代に名付けたのが始まり(図16)。以降、この表記ルールがずっと継続されている。

なお、デスクトップ向けRyzenは第4世代でネーミングルールが変更され、ノート向けと同様「5×××」と5000番台のプロセッサーナンバーが付けられている。
プロセッサーナンバー末尾の英字はカテゴリーを表している。主なAMD CPUのカテゴリーは図17の通り。現行のCPUでは、処理性能を重視したハイエンドパソコン向けの「H」、性能と省電力性のバランスを重視した一般ノート向けの「U」、グーグルのChrome OSを搭載したChromebook向けに最適化された「C」の3つがある。インテルのCPUと同様、同ブランド、同シリーズでもカテゴリーが違うと、TDPが異なり、性能や消費電力が大きく違うので注意したい。

2つの動作周波数の違いは?
スペック表の動作周波数欄には、「基本動作周波数」「ブースト機能対応の有無」「最大動作周波数」が記載されている(図18)。

基本動作周波数とは、CPUの熱設計電力に基づく標準動作クロックのこと。CPUは図19の通り、クロックに合わせて処理を実行するため、動作周波数が高くなるほど時間当たりの処理回数が多くなる。このため、同世代、同ブランド、同シリーズにおいては、基本動作周波数が高いほど性能が高くなる。

ブースト機能は、CPUの消費電力や発熱量に余裕がある場合に、基本動作周波数をあらかじめ決められた値まで自動的に引き上げて、性能を高める機能だ。インテルのCPU、AMDのCPUともに、多くの製品がこの機能を搭載している。図20は、インテルのブースト機能「ターボ・ブースト・テクノロジー」の動作イメージだ。1コアの場合は最大で4.6GHz、2コアの場合は最大4.4GHzで動作するといったように、動作コア数により上限値が設定されている。

最大動作周波数というのは、ブースト機能の最大値(1コア動作時の上限値)を意味している(図21)。ブースト機能に対応したCPUの場合は、最大動作周波数が性能の判断基準となる。

なお、インテルの第11世代CPUは、規定範囲内で各パソコンメーカーが自由にTDPを設定できる。このため、第11世代CPU搭載パソコンでは、CPUのスペック欄にTDPを基準とする基本動作周波数を記載していないものがほとんどだ。今後は同様のCPUが増えると思われるので、スペック欄にはブースト機能の最大値である最大動作周波数だけを掲載する製品が多くなると予想される。
コア数とスレッド数の関係を理解しよう
スペック表のコア数とスレッド数の欄には、物理コア数とスレッド数とマルチスレッド機能対応の有無が記載されている(図22)。

コア数とはCPUの演算ユニットの物理的な数のこと。例えば4コアと表記されていれば、1つのCPUパッケージに4基の演算ユニットを搭載していることを意味している。コア数が多いほど同時に実行できる処理数が増えるので性能が高くなる(図23)。

マルチスレッド機能は、1つの物理コアを仮想的に2つに見せ、並列処理を実行する機能だ。図24はインテルのハイパースレッディングの動作イメージ。AMD CPUも同様の機能を搭載している。

スレッド数とは、CPUが同時に行えるデータ処理数を意味する。マルチスレッド機能対応のCPUの場合、スレッド数は物理コアの2倍になる。例えば2コアであれば4、4コアであれば8となる。スレッド数が多いほど同時に処理できるデータ量が増えるため、性能は高くなる(図25)。

ただし、マルチスレッド機能はCPUコアの余力を使う機能なので、実際に物理コア数を増やすほどの効果はない。例えば、同世代で動作周波数(ブースト時含む)が同じCPUの場合は、4コアCPUのほうが2コア/4スレッドのCPUよりも高性能だ。このことは覚えておきたい。
(ライター 滝伸次)
[日経PC21 2021年11月号掲載記事を再構成]
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