アステラスの遺伝子治療薬候補、米国での治験差し止め
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アステラス製薬は27日、遺伝子を投与して治療する新薬候補「AT845」について米食品医薬品局(FDA)から米国での臨床試験(治験)を差し止めるよう指示があったと発表した。治験に参加した患者に深刻な有害事象がみられたためだ。アステラスは業績への影響は精査中としている。
AT845は難病の一つ「ポンペ病」の治療を目指した新薬候補だ。ポンペ病はグリコーゲンが分解できなくなるなどして、歩きづらくなったり、呼吸がしづらくなったりする。
AT845は患者の体内に遺伝子を送り込み、特定のたんぱく質を増やして治療効果を狙う。アステラスは買収した米オーデンテス・セラピューティクス(現アステラスジーンセラピーズ)の遺伝子治療の技術を使って、研究開発をしていた。
第1.2相の治験で深刻な有害事象が確認されたという。現時点で「投与による因果関係があるかどうか分からない段階」(アステラス)としている。今後、FDAから30日以内に差し止め理由に関する正式な文書が届くという。
オーデンテスを巡っては、研究開発の遅れによる特別損失が目立っている。アステラスは2020年1月、オーデンテスを約30億ドルで買収した。だが研究開発の遅れなどから21年3月期に約588億円、22年3月期に約300億円をそれぞれオーデンテス関連の減損損失として計上した。アステラスは中期経営計画で遺伝子治療を強化するとしているが、戦略の仕切り直しは避けられそうにない。
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