次世代抗がん剤、効果予測の指標発見 星薬科大など
星薬科大学や東京都医学総合研究所などの研究チームは、次世代の抗がん剤として開発が進む「たんぱく質分解薬」の効果予測に役立つ酵素を発見した。「UBE2N」という酵素をもつがん細胞には効果があるが、欠損させたがん細胞では効果が弱くなることが分かった。たんぱく質分解薬が効く患者を見極める指標になると期待される。

たんぱく質分解薬は「スナイパー」とも呼ばれ、がんの生存や増殖につながるたんぱく質を狙い撃ちする。細胞がもともと備える不要たんぱく質を分解する仕組みを活用する。がん細胞が死滅するのを防ぐ「cIAP1」というたんぱく質を分解する薬剤などの開発が進むが、どのように作用しているかは詳しく分かっていなかった。
不要たんぱく質を分解する目印になる「ユビキチン」という分子に着目した。たんぱく質分解薬はcIAP1の表面にユビキチンを鎖状に連結して分解に導く。研究チームはUBE2Nという酵素がこの連結反応に関わっていることを突き止めた。がん細胞に薬剤を加えると、通常は約8割が死滅するが、UBE2Nを欠損させたがん細胞は約2割にとどまった。
鎖状に連結したユビキチンを詳しく解析したところ、途中で枝分かれしていることが分かった。UBE2Nは幹の部分をつなぎ、別の酵素が枝の部分をつないでいた。分解の目印になる構造は枝の部分だが、UBE2Nが欠損すると幹ごとなくなってしまう。
星薬科大学の大竹史明特任准教授は「将来的には効果の予測だけではなく、効果を高める方法を開発できるかもしれない」と期待する。がん細胞でUBE2Nを活性化することができれば、たんぱく質分解薬が効きやすくなるとみている。UBE2Nは乳がんや肺がんなど様々ながん細胞で、正常な細胞よりも存在量が多いことが知られている。