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ヌビーン・ジャパン社長「ESG、インパクト投資に遅れ」

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ESG(環境・社会・企業統治)投資は、リスク管理や気候変動への対応から注目され日本でも急ピッチで導入が進んでいる。ただ社会課題の解決と経済リターンの確保を並行する「インパクト投資」の分野では、日本は欧米に後れをとっている。米TIAA(全米教職員年金保険組合)の資産運用部門であるヌビーンの日本法人、ヌビーン・ジャパンの鈴木康之社長に現状を聞いた。

――ESG投資が世界的に浸透してきました。

「ESG投資は由来の通り、環境・社会・企業統治(ガバナンス)に配慮した投資をさす。当初はガバナンスの部分が強く、取締役会の運営のコントロールや不正の防止などのリスク管理が重要視されてきた。その後、気候変動への対応の必要性から環境が注目されるようになった」

「足元では、新型コロナウイルス禍であっても社員に対し適切な労働環境が確保されているか、新型コロナの感染防止に対応できているかなどの社会的な取り組みも注目を浴びている」

――欧米に対し、日本のESG投資は進んでいるのでしょうか。

「ESG投資には大きく3つの領域がある。まず投資先の企業評価にESGの要素を加える『ESGインテグレーション(統合)』。2つ目が運用会社や投資家と投資先企業が建設的な対話をする『エンゲージメント』。そしてインパクト投資だ」

「日本では10年前、ESG投資でかなり遅れていた。ところが金融庁の働きかけを通じ、ESGインテグレーションやエンゲージメントの2つは欧州に引けをとらない段階まで進み、米国よりも進んでいるぐらいだ。一方、インパクト投資では欧米に大きく後れをとっているのが現状だ」

――なぜインパクト投資で遅れているのでしょうか。

「インパクト投資では、不動産や農産物といった債券や株式以外のオルタナティブ(代替)資産への投資が一つの鍵を握る。代替資産への投資は欧米で歴史が長いが、日本では浅い。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もほとんどが株式や債券などが大半を占めている。代替資産への投資が日本でも進めば、インパクト投資の拡大につながるはずだ」

――ESG投資の課題はありますか。

「個人投資家向けに対する情報開示の少なさが一つの課題だ。機関投資家がESG関連の資産に投資する場合は、ESGリポートなどを年1回開示することになっている。一方でESGファンドをうたう会社がESGへの貢献度を公に発表しているものはほとんど無い」

「欧州でも個人投資家向けの情報開示は少ない傾向にあるが、ガイドラインやリポートなどをつくる取り組みが始まっている。業界団体などが主導して情報を開示するための枠組みが作られ始めている」

――ESG投資の観点で、今後有望な投資先は。

「ESG投資では、少なくとも2~3年は気候変動への対応が重要なテーマになる。二酸化炭素(CO2)を実際に減らすなど、目に見える実物資産が伸びる。具体的には農地や森林、再生可能エネルギーのインフラが有望だ」

ESG投資、理解「1割未満」
日本生命保険が2021年9月に実施した調査によると、ESG投資の認知度は約3割にとどまっている。SDGs(持続可能な開発目標)の認知度向上で環境配慮への意識が高まる中、国内では金融商品への理解はまだまだ進んでいない。
調査結果によれば、ESG投資という言葉を「聞いたことがない」と回答したのは約7割にのぼった。中身まで理解している回答者は1割未満だった。メディアへの露出、金融商品があふれる中、意外な結果となった。
ESG投資の中でもインパクト投資の認知度はさらに低い。社会変革推進財団(東京・港)の調査では、インパクト投資の意味を「多少なりとも知っている」と答えたのはわずか6.6%にとどまっている。
ヌビーン・ジャパンでは大学生への啓発を進めており、21年には東京大学や法政大学など関東圏の大学で講義を実施した。22年からは、関西大学や関西学院大学などの関西圏、中部圏の大学でも活動を広げる方針だ。
鈴木氏は「認知度の高いSDGsに関連付けてESG投資を伝えることで、学生の理解促進につながった」と話す。ESG投資の認知度を高めるためには、工夫をこらす必要がある。
(柘植衛)

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