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五輪目前、日本のコロナ水際対策は穴だらけ

多くの店舗が閉鎖されたままで閑散とする成田国際空港
日経ビジネス電子版

東京五輪・パラリンピックまで約2カ月となったが、新型コロナウイルスの感染拡大が続き不安が広がっている。筆者が一時帰国した4月下旬に水際対策を実体験して見えてきたのは、「穴だらけの現実」だった。「東京五輪型ウイルスを生みかねない」との声もある。このままでは未来に語り継がれる失態になりかねない。

「水際対策の新体制は3月26日からで、現場はまだ混乱している」

4月下旬に米ニューヨークから一時帰国すると、成田国際空港の水際対策担当者はこう教えてくれた。米国からの帰国者への対策は変異ウイルスが確認された英国などと比べて少し緩やかだ。それでも出発前の現地空港から質問票への記入を求められ、搭乗機内でも複数書類の記入と誓約書への署名が必要だった。

日本到着後は空港でさらに健康チェックと唾液検査、自主隔離中の所在地や健康状態を政府に知らせるためのアプリ3種(グーグルマップを加えると4種)のスマートフォンへのダウンロード作業に1時間半~2時間を要した。

冒頭の担当者は、そのダウンロード作業を支援していた、中国語を話せる男性だった。「個人情報漏洩の問題でLINEの使用が廃止され、ワッツアップが追加されたがほとんど使っている人がいない。作業は複雑になり、特に高齢者への説明は難しい」

入国翌日には送られてくるはずの位置情報確認アプリ「OEL(Overseas Entrants Locator)」のIDとパスワード。14日間の自主隔離中、毎日ある予定だった健康状態の確認連絡。筆者の場合そのいずれもなく、5月初旬に隔離期間を終えるまで連絡は一切なかった。

「管轄外」を主張する厚労省

飛行機搭乗前72時間以内に実施したPCR検査、さらに成田空港での唾液検査でも陰性の結果で、4月初旬にはワクチンも接種していた。それでも例外なく自主隔離が求められたので千葉の実家に籠もり、健康状態の変化もなかった。結果オーライといえばそれまでだが、もし筆者が新型コロナに感染していたら……。

厚生労働省の担当者に確認すると、「対策の運用後は厚労省の管轄だが、ダウンロードは空港のある地方自治体の管轄」の一点張り。そこで成田空港の検疫所に確認すると、今度は「対策そのものは厚労省の担当だ」と主張された。

成田空港では冒頭の担当者とは別の担当者に、位置情報確認アプリは地方自治体、ワッツアップなどでの連絡は日本政府の管轄と聞いていた。その時から予感していた「縦割りの弊害」を改めて認識した。

検疫所の担当者に「厚労省に電話してこの連絡先を聞いた。隔離期間中、一度もチェックがなかったがどういうことか」としつこく聞くと、ようやく筆者の名前などを確認し、メールアドレスを間違えていたことが判明した。空港で実際にメールを送ってもらう確認作業をしたので間違えようもないと伝えると、「健康だったのなら問題ない」とあっけらかんと返された。

5月13日、勤務医で構成する「全国医師ユニオン」は東京五輪・パラリンピックの中止を政府に求める要請書を提出した。国内で変異ウイルスが広がれば「100年にわたって東京オリンピック型と言われかねない」と植山直人代表。水際対策も穴だらけとあれば、その可能性は否定できない。

(日経BPニューヨーク支局長 池松由香)

[日経ビジネス 2021年5月24日号の記事を再構成]

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