サービス連合、ベア「1%以上」要求を決定

観光関連業界の労働組合でつくるサービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は26日、2023年の春季労使交渉で、賃金を一律1%以上引き上げるベースアップ(ベア)を求めると発表した。3年ぶりに全ての組合に取り組みを求める。
人手不足による現場の負担増などを考慮し、「すべての加盟組合が賃金カーブを維持したうえで、1%以上の実質的な賃金改善に取り組む」と方針案に明記した。21〜22年は対象を「賃金改善が可能な加盟組合」としていた。
ベア要求は10年連続で、「1%以上」は4年連続となる。政府の観光喚起策「全国旅行支援」や訪日外国人(インバウンド)の増加で、国内の旅行・宿泊客数は回復している。ただ約3年に及ぶコロナ禍で財務状況が厳しい観光関連企業も多く、水準は据え置いた。
パートや契約社員は月給4300円以上、時給34円以上の賃金改善が目安になる。各組合は遅くとも3月上旬までに要求書を提出し、経営陣と交渉に入る。集中交渉期間は3月13〜17日とし3月末までの決着を目指す。
桜田あすか副会長は同日、都内で開いた記者会見で「今年(の賃上げ交渉)は世間から高い注目が集まっている。インフレや需要回復といった市場環境から賃上げの機運も高まっている」と述べた。
「1%以上」は連合の掲げる「3%程度」を下回る。「改善できるところは1%からさらに踏み込む。『以上』という部分にこだわりたい」とした。
サービス連合は01年7月に発足。ホテルや旅行会社など約200組合が加盟する。組合員は約4万1000人でコロナ前から6000人程度減った。中期的な賃金水準として「35歳年収550万円」を掲げている。
賃上げは賃金水準を一律に引き上げるベースアップと、勤続年数が上がるごとに増える定期昇給からなる。2014年春季労使交渉(春闘)から政府が産業界に対し賃上げを求める「官製春闘」が始まった。産業界では正社員間でも賃金要求に差をつける「脱一律」の動きが広がる。年功序列モデルが崩れ、生産性向上のために成果や役割に応じて賃金に差をつける流れが強まり、一律での賃上げ要求の意義は薄れている。